希少な初期ナンバーフレーム。個人売買にて購入したのだが、どうもノーマルとは違うようなので見て欲しいと当社に持ち込まれた。

●見た瞬間に感動してしまった。当時のレース用補強がなされているのだ。分厚い鉄板を張り重ねて親の仇のように豪快な溶接がなされている。そのフレーム剛性たるや300km/h出しても振れ一つ起こさない程であると思われる…

と言うのは真っ赤な嘘だ。 おそらく相当なハイスピードでぶつかったのであろう。ハンドルストッパーはもぎ取れて、ステムベアリングアンダーレースの収まる部分も楕円に変型している。ステムネックの曲がりによってくしゃくしゃになったガセットプレートには何枚にも鉄板を張り重ねてこれでもかと溶接ビードを走らせてあった。(その溶接もきちんとくっついてはいない)ハンドルストッパーには装甲車にでも使えそうな程に分厚い鉄片が張り付けてあったが、ハンマーでつつくとはがれてしまった。やっつけ修理の典型だ…

余談ではあるが、ネットオークションの発達でオートバイパーツの個人売買が盛んになり、フレーム単品で売りに出されているものの中には、ここ迄酷くは無くとも重大な問題を抱えたものが少なく無い。少なくともオートバイの形になっていれば価値のあるバイクがフレーム単品にされること自体、本来不思議なのだ。以前某雑誌でフレームやエンジンをバラバラに購入して理想のカスタムZを作ると言う記事を企画したのでどうですかと言われた事があるが、真に受けた読者が不幸になるから絶対に止めなさいとアドバイスした事がある。経験の無い一般の方がZのフレームの良否を判断するなぞ事実上不可能に近いからだ。
●センターのパイプに対して左右のパイプが大きく湾曲しているのが見てとれる。分かりやすく言えばフレームが”猫背”になっているのだ。かなりのスピードで正面衝突したものと思われる。 ●エンジン下側のマウント取り付け部にはボルトが折れ込んだままになっている。おそらく強力な衝撃でボルトの頭は弾け飛んでしまったのだろう。
●オーナーの希望により修復作業を行った。ガセット部分は切断、除去してフレームを修正後、鉄板から新規に製作した。ハンドルストッパーもオリジナル通りの形状に旋盤で製作して溶接し直した。フレーム寸法が正常に戻ってから補強も施した。フレーム補強は修正機上にてレーザーで測定しつつ行う。補強する事で歪みが生じては何にもならない。 ●ハンドルストッパーがきちんと真直ぐ付いているのがわかるだろうか?
又、仕上げにパテの類いは一切使用しない。パイプやガセットのくぼみはロウ付けにて修正を補修を行った。
これは別の車体ではああるが、エンジンマウントボルトの通し穴まで変型していたのでこれも製作し直した。
●以上の様に当社は日本中からZのフレーム修正や、補強の依頼を受け付けしています。
修理や補強、加工の相談、発送の方法などについてもご気軽にスタッフまでお問い合わせ下さい。