今回のこの車両、エンジンからの異音以外は特別調子が悪いわけではなかった。が、STDエンジンが備えている潜在能力をオーバーホール兼ファインチューニングを施す事によりどれだけポテンシャルアップするのか?という兼ねてからのオーナーの疑問と要望に応える形のオーバーホール作業となった。

●外観も見ての通り手曲げ集合管にアルミリムといった軽いカスタムに止まっている。ライトな仕様ではあるが以外とこの程度のモディファイが飽きずに永く乗れたりする。もちろんいつだってフルノーマルに戻せるといった安心感もある。
●外装、キャブ、マフラーを外し腰上のエンジン分解に入る。分解しながらも一つ一つのパーツの状態をチェックしている。 ●若干ではあるがカム山に腐食跡が見つかった。再利用出来なくはないがラッピング程度では修正が効かない程度だったのでストックにあった程度良好なノーマルカムシャフトを使用することとなった。
●全体的な消耗もあったが異音の一番の原因はやはりアイドラーギアの消耗であった。これでも普通に走ってしまうZもある意味凄いが...
●分解作業を進めながら各要所をチェックしてゆく。闇雲にばらしていく訳ではない。
●写真右のEXバルブに比べ結構なカーボンスラッジが蓄積しているINバルブ。オイル下がりも原因の一つ。
●今回冒頭記した通り、STDエンジンの持つポテンシャルを引き出したいといったオーナーの願望からクランクバラバラフルリビルトとなった。見てください目映いばかりのこの輝き!! ●フルオーバーホールなので当然トランスミッション関係もフルリビルト。ご覧のようにシフトドラムもバリ取+鏡面研磨、シフトフィールの向上を狙う。
●トランスミッションシャフト類も当然のごとくバリ取り鏡面研磨。
●磨き込まれたアウトプットシャフトに各ギアを組み込み摺動性をチェック、ドックの消耗が見られた2速、5速ギアは新品を組み込んだ。 ●フルリビルトされたクラッチハウジングにシャフト&ギアを組み込んだ状態。当然全てのベアリングは新品に交換。
●綺麗に洗浄され、ペイントも終了したロアケース。全てのネジ山はタッピング&清掃が施される。 ●ケースデッキ面の面研後対策された新品シリンダースタッドが打ち込まれる。
●アッパーケースにクランクシャフト、トランスミッション回りが乗せられる。美しい... ●上下クランクケースが閉められ、美しくブロンズ色に輝くコネクティングロッドが顔を出す。
●閉められたクランクケース下からトランスミッションを覗く。手前に見えるシフトフォーク先端も当然磨き込まれている。 ●内燃機加工、洗浄、エンジンペイントが終了し組み立ての用意に入るシリンダーヘッドと各パーツ。
●PAMSオリジナルの対策バルブガイドに打ち換えられている。当然ポート内の段つき修正も施されている。面研された肌が美しい。 ●こちらも実はZ1オリジナルバルブではない。大きな違いは熱処理による耐久性。
●バルブ廻りの組み付けが終了したヘッド。組み付け時もバルブ&シートのアタリ具合等を確認しながら慎重に組み付けを行う。 ●WPC処理を施したリフター。フリクションロスの低減、対摩耗性、静音などの効果が見込める。詳しくはHP内のWPC項を参照して欲しい。
●リフターを組み込んだヘッド。指でくるくるとスムーズに回転するのが正常。写真では分かりづらいがカムメタルにもWPC処理が施されている。 ●ダミーヘッドを用いて精密ボーリングされたシリンダーが差し込まれロングブロック状態になったエンジン。スリーブ内のホーニングクロスハッチも現代の高性能オイルに合わせ若干細目に設定した。ここでもフリクションの低減を狙う。もちろん純正ピストンのエッジ処理なども施してある。
●車体に搭載されたエンジンを下から覗く。 ●GPZ系の新品オイルポンプを使用する。新品というだけではなくZ1用に比べ吐出量も増えている。
●一段落付いたところでひとときの談笑タイム。この状態で眺めてもやはりZは美しい。
●カム山&ジャーナル部も丹念にラッピング処理を施す。 ●シリンダーヘッドが搭載される。
●同時に補器類のセットアップも進行させていく。
●ワンウェイクラッチ廻り、マグネットローターを組み付けていく。当然カバー側のオイルリーク対策も万全だ。ここまでくれば完成もまじかとなる。
●完成し最初の火入れ式、いつも緊張する瞬間だが驚く程静かに回るエンジンにスタッフもホッとひといき。 ●晴れて納車当日、試乗後別物になったとオーナーも大喜び。STDのまま新車を越えたZエンジンのテイストを存分に味わってもらいたい。