現在世の中で大人気のZ1000MKII。この車両はマフラー、オイルクーラー、リアショック等が変更されている以外基本的にSTD状態を保っています。キャブレターセッティングと合わせてシム調整を行った際にカムホルダーを固定するボルトのトルク抜けが数カ所発見された為、大事をとり全箇所ヘリサート加工を施すことになりました。ところがこれが引き金になってしまい、もともとSTDのパワーに満足していなかったオーナーのチューニング魂に火をつけてしまう結果となりました。詳細は以下に......。

●ほぼSTD状態を保っているMKII。とても大切にされていることが伝わってきます。 ●シム調整を行うためヘッドカバーを外した状態。この時点でカムホルダーボルトの異常に気づく。
●ヘリサート加工に伴い、他の消耗品類も変えてしまいたいとのリクエストをもらいヘッドを外した状態。 ●ピストンヘッドを上方から覗く。若干のばらつきはあるが一から四番シリンダーまでなかなか良い状態。

●この画像、ことの流れから行くとちょっと不思議な絵ですよね...なぜにエンジンが降ろされているのか?実は修理を進めて行く段階でオーナーのスイッチがONになってしまったようで、OHと同時にチューニングを施す流れとなってしまった。しかもどうせやるならと言うことで内容的に結構過激な仕様へと進んで行った。
●分解され並べられた腰下パーツ群。 ●空っぽになったクランクケース。これから洗浄マスキングされ、ブラスト後耐熱ブラックペイントを施します。
●奇麗に仕上がったアッパーケース。メインベアリングの締結方式をSTDのボルトタイプからスタッド方式へ変更。 ●ブラスト後耐熱ペイントがされたアッパーケースを上から見る。シリンダースタッドを打ち込む前の物だがデッキ面研されたシリンダー着座面が美しく光る。大径スリーブ使用のためケース側にも逃げ加工が施されている。
●1/100〜2/100代まで芯出しされたクランクシャフト、完全リビルトされたクラッチバスケット、トランスミッションが仲良く並ぶ。キックシャフトはあえて残された。
●閉じられたクランクケース。この先何年も、何十年も開けられることはないだろう。磨かれたシフトドラムの輝きもオイルパンを装着してしまえばもう見れなくなる。
●完全に閉じられたクランクケースを180°回転させピストンの組み込みを待つ。 ●ダミーヘッド使用による精密ボーリングが施されたシリンダーと組込まれるワイセコ74mmピストン。排気量は1135ccとなる。
●シリンダーピストンが組込まれた。ここまで来るとだんだんとエンジンらしくなってくる。この時点でハンドクランキングし異常なフリクション等が発生していないかチェックする。左上は組み込み前のシリンダーを下から見たところ。スリーブ入れ替えと同時にシリンダー下面も面研され輝いている。
●PAMSお得意のツインプラグ仕様に加工されたヘッド。蓄積されたデータから燃焼室容積等も測定、決定されている。ヘッドの作り込みはチューニングメニューの中で最も気を使う部分でもある。
●研磨加工が終了したポート内。流速を落とさずいかに吸排気効率を上げられるかをイメージしながら作業に望む。耐久性も重視しバルブガイドのカットはあえてしない方針。鏡面仕上げも行っていない。
●必要最小限に切削加工されたハイリフトカム対策のカムノーズ逃げ加工。ヘッドカバー側にも同じ様な加工が施されている。
●これからヘッドに組込まれるのを待つパーツ群。ハイリフトカム使用の為インナーシム仕様へ変更される。リフターにはフリクション低減と耐久性を望みWPC処理を施してある。バルブスプリングもどちらかというとかなり柔らかめの設定。
●組込み前のバルブ。ちょっと磨いてみましたが、そんなに効果が有るのかと聞かれると正直疑問。。。
●インナーシム仕様となったバルブリテーナー。耐久性などの面でチタンリテーナーは我々的にはちょっと×。だからあえて純正流用です。STDと比較して大幅にリフト量がアップされる事に合わせてカムノーズ逃げ加工も施されているのが解るだろうか?組み合わされるカムとヘッドの個体差によっては、リフターホール周辺のみならず、カムノーズの軌道上360°切削する事も少なくない。更に、カムノーズ軌道内で必要最小限の切削加工が望ましい。
●バルブが組込まれた燃焼室。緻密に計算されたシートカットと面研などでチャンバーボリュームもシンクロ済み。
●組み上がったヘッドを本体へ合体。
●ちょっと回りの渋かったスターターモーターも分解リビルト。排気量/圧縮共に上がる事を想定し、ここにも元気一発。
●洗浄清掃後、消耗部品も交換。セルスタートが渋くなってきたと感じたらリビルトをおすすめ!
●待ち構えていたフレームに以前よりも遥かに強力になったエンジンが搭載された。ツインプラグ仕様に合わせコイルの抵抗値を変更。シート下にコイルマウントを増設。メンテ性や通風も考えてセットアップ。8本きれいに並んだプラグコードがクール!
●コスメティックレストア(ブラストペイント)も施されたエンジンに合わせカバー類もバフ仕上げにより輝かせる。
●完成した愛車とご対面のオーナー。何より嬉しい瞬間。以前よりも圧倒的に静々とアイドリングをうつエンジンに驚く。
●今回、ちょっとした事が引き金となり、リビルトを兼ねてチューニングメニューまで発展してしまったMK2。でもカムホルダーの締め付けトルク抜けは致命的で一歩間違えばエンジンクラッシュとなっていた可能性も否定できない。

結果的に外観には変化がないものの、圧倒的に強力な心臓を手にいれ、友人の乗るハヤブサを追いかけ回す仕様となった。オーナーもこれに負けない位パワフルで楽しい人だけに、きっと満喫してもらえるとスタッフ一同確信して納車となった。