どんなにキャブセッティングを施してもスムーズにエンジンが回っていかないという症状でドック入りしたZ1。まずはキャブセッティングから始める用意として、圧縮の計測やリークダウンテストを行った結果、異常な数値が見られたため、まずはヘッドカバーを外しタペット廻りのチェックを行った。
●マフラー交換もメニューに入っていたため、既に元のマフラーは外された状態です。 ●前後共17インチホイルに変更されている。脚廻りを他車から流用する場合、車体のディメンション設定はとても重要です。
●ヘッドカバーを外しまずは上死点を出してみる。すると???目視で見てもカムノーズの位置がおかしい? ●バルブタイミングを計ってみると、正常な値からちょうどカムスプロケット丁数で1コマのずれが発見された。走るには走るが、これではどんなにキャブセッティングを施しても本調子にはならないはずだ。
●正規バルブタイミングの設定と、万が一の為、カムシャフトも取り外しアイドラ−やチェーンスライダーなどのチェックも行う。まずはトップアイドラ−を外す。 ●カムチェーントンネルをヘッド上方から覗いたところ、アイドラ−ギアに異常が見られたためヘッドを外し異常のあったアイドラ−を摘出する。御覧の通りセンタ−の樹脂部が剥離しバラけてしまっている状態だった。この状態で乗り続けると加速度的にさらにアイドラ−は消耗し、最悪の場合カムチェーンのガイドが出来なくなり非常に危険だ。
●作業進行と同時に絶えずオーナーと連絡を取り状態を伝えながら対処を考えた結果、以前からかなり白煙をマフラーから吹いてしまう症状が見られたらしく、この機会に腰上をきっちりオーバーホールする事となった。 ●ピストンヘッドもカーボンが積もっている場所と、ところどころオイル下がりによるものと見られるウェットな場所が見られた。
●排気量はノーマルだったがデータとして残すためピストン、シリンダー間のクリアランスを測定しておく。今回はオーナーと話し合った結果オーバホールと共に1015ccへのボアアップを施す事に決定。 ●使用されていたバルブはノーマル。当然適合するコッターは溝の形状に合わせ角タイプのはず・・・。
●この形状がノーマルバルブに適合する角溝タイプ。当然このタイプのコッターが全てのノーマルバルブに使用されているはずなのだが??? ●ところが、IN&EXバルブ合わせて3本に本来であればJ系等に使用される丸溝タイプのコッターが混ざり使用されていた。以前どこかでOHされた時に間違えて組まれてしまったのだろうか?溝にかっちりとはまり込まないため、バルブ自体のホールドに不安が残る。
●取り外されたノーマルバルブ。INバルブの2番から4番にかけて特にデポジットの蓄積がひどい。ここまで蓄積してしまうとさすがに吸入効率にも大きく影響が出る。バルブフェイスやあたり等をチェックした結果、バルブも新品を使用する事とした。 ●バルブやバルブSPなどを取り外した後、カムシャフトを載せ正規トルクでホルダーを締め付けてみる。この状態でカムがスルスル回るのが正常だが、この個体はかなりきつい状態だったため、カムラインの擦り合わせ作業を行った。相当にフリクションを発生していたのはカムメタルの状態を見ても明らかだった。
●シリンダーが外され、新たな鍛造ピストンを仲良く待つコンロッド達。 ●エッジ処理等が施されコンロッドに組み込まれたワイセコ製鍛造ピストン。
●トップアイドラ−だけでなく全てのアイドラ−類は交換されている。圧縮の上昇に合わせ今回はウェブカムST1をチョイス。もちろんアウターシムのままでOK、ヘッドも無加工。 ●エンジンが組み上がりマフラーとキャブレターが取り付けられる。
●点火系にも手が入れられDYNA2000をチョイス。高圧縮にも負けない強力スパーク!! ●キャブレターはFCRの35φ。この口径なら低速域からのツキもかなりいける。
●下振りホワイトメーターが目を引くハンドル廻り。 ●オーナーの希望でクラッチレリーズキットを装着する。
●チェーン&スプロケット交換の為リアホイルを外す。 ●スプロケットギアを見るとかなり磨耗が進んでいた。
●新しいチェーン&スプロケットに交換する。ワイドホイルに交換等でチェーンラインを確保するためオフセットスプロケットが使用されている場合は特に緩み止め等の対策に気を配る必要がある。
今回、結果的にエンジンOHからチェーン交換等を行い安心し気持ちよく乗れるZ1に仕上がった。以前の状態ではとてもではないが楽しくZライフを満喫できる状態ではなかったはず。
生まれ変わったこのカスタムZで本来のすばらしさを味わって欲しい。