一流の寿司職人であるオーナーは数年前にZ1を購入されましたが初めてPAMSに来店してからはメンテナンスしつつ毎日通勤で使用していました。程度はすごく良かったのですが、徐々に白煙を吐く症状が出始めエンジンからの異音も以前に比べ明らかに発生してきているとの事から今回腰上OH及びキャブレター交換に踏み切りました。
●まずはヘッドカバーを外した状態。バルタイの駒飛び等はない。
●カムホルダーを外してみる。カムメタルの当たりを見る限りカムライン等の異常は見られないが、カムシャフトのサイドスラストを規制する為のガイド部がかなりの範囲で崩れてしまっている状態だった。幸いにも一部分外周部方向へノンダメージであったため、スラストガイドとしての役目は果たす事が出来ると判断し、このまま使用することとした。これは自然に消耗した物ではなく、以前誰かの手によりカムの脱着を行われ得た際ガイド部にカムが乗り上げてしまっている事に気付かずそのままカムホルダーを締め付けてしまった事が考えられる。
●シリンダーヘッドを外した状態。割とウェット状態のカーボンが蓄積している。オイル下がりだけではなく、若干のオイル上がりも発生していたようでピストンの外周部には逆にカーボンの付着が見られない。
●シリンダーブロックを取り外した状態。リング間の吹き抜けが見て取れる。オイルリングは当時の一体型の物で、これを見ても本格的なOHは今回が最初の可能性が高い。
●今回のOHを期にボアアップも実行。使用したピストンはワイセコ70mm鍛造ピストン。排気量と同時に圧縮も上がる為STDとは比べ物にならない程パワフルなエンジンに生まれ変わる。 ●ピストンに合わせボーリング&ホーニングが終了したシリンダー。ホーニングもプラトー仕上げでこだわった。また荒れ気味だったシリンダーデッキ面も最小面研にて仕上げてある。
●折れて脱落していたスライダーも勿論新品に交換済。
●シリンダーをインストールしたところ。プラトー仕上げによるシリンダー壁の目の細かさが分かるだろうか。この時点でハンドクランキングにて異常なフリクション等が発生していないかをチェックする。
●痛んでいたアイドラーギア類も全て純正新品に交換。
●純正新品バルブが組付けられたヘッド。バルブスプリング等も勿論純正新品を組込んでいます。 ●焼や傷を取り磨き込んだバルブリフターを組込む。
●ヘッドを搭載したところ。 ●上昇した圧縮に合わせ今回はウェブST1を組込んだ。アジャスタブルカムスプロケットを使用してバルブタイミングをとってゆく。
●レポート画像にはありませんが、以上の内容に追加してCRキャブレターと427手曲げ集合をセットアップ。マフラーによる軽量化もあるが、大きくトルクアップしたエンジンとCRキャブによる豪快さが重なり以前とは全く違うフィーリングになった。OHされたエンジンに対する信頼感も大きく向上した今回の作業メニューは、以前オーナーが感じていた不安を払拭しただけではなく、更なるパフォーマンスの向上によって走る楽しさも倍増したはず。生まれ変わった愛車を存分に味わって頂きたい。