今回のこの車両、全体的にかなりカスタムされたZ1です。だけどちょっとシャレにならないトラブルを引き起こしてしまいました。電話にて修理依頼の問い合わせを受けましたが、なんと80km前後で走行中後輪がフルロック!!原因はFスプロケットが脱落しドライブチェーンが絡まってしまったこと。幸運にもトラブル発生時は直線を走行中だったのでどうにか車体をコントロールし転倒には至らなかったがこれがコーナリング最中に仮に起こったとすれば重大な事故になった可能性が高い。
更に車体が入庫しくまなく見ていくと驚くような光景に出くわした。

●Fスプロケットカバー廻りのアップ。写真では分かりづらいと思うが、スプロケットギアがアウトプットシャフトから脱落し、なんとスイングアームのピボットシャフト部に手裏剣のごとく突き刺さっている!! 完全にパイプ内まで刺さってしまっているため手で引き抜こうとしたぐらいでは外れてくれない。トラブル発生時の凄まじさを語る一部。
赤矢印は突き刺さったままのスプロケットギア。
●スプロケットが脱落し絡まったチェーンがフレームまでをも押しつぶしている。
●実際にこのような状態でギアが突き刺さっていた。赤矢印は突き刺さった衝撃でピボットベアリング本体まで変形してしまっている箇所。
●今回のトラブル以外にも明らかなフレームの歪みなどが見られたためオーナーと相談しフレーム修正なども同時に施すこととなった。赤矢印はフレームとエンジンマウントの間に入れられたスペーサー。本来はこのようなものは入らない。このようなものが入っているということは明らかにフレームディメンションが狂っていることを物語っている。
●エンジンマウントを外してみると案の定マウント自体も曲がってしまっている。右は修正後。
●測定した結果予想通りフレーム本体にかなりの歪みが発生していた。しかしなぜ歪んだフレームに補強を施し更に剛性の高い足回り等を入れてしまうのであろうか?正直理解に苦しむ・・・。どんなエンジンも足回りもまっすぐで健康なフレームがまずあっての話だと思う。ちなみにリアショックマウントとスイングアーム側ショックマウント幅もあっておらず後方から見ると目視でも確認できるほどハの字状になってしまっている。
●測定の結果タイヤセンター及びチェーンラインも大幅に狂っていた。スプロケットの脱落はこのあたりも影響していると思う。今回はリアハブを加工してこれに対処した。タイヤセンターは今更言うまでもないが操縦特性に大きく影響するし、ずれたチェーンラインは異常なまでのスプロケット&チェーンの摩耗等を引き起こし、さらにスプロケットナットも緩みやすくなってしまう。チェーンラインもフレームも本来まっすぐな場所はまっすぐでなければならない。また極端にオフセットされたスプロケットは力点の変化からアウトプットシャフトを支えるベアリング等へもダメージを与えることになる。
●フレーム修正と同時に大きくダメージを受けたアンダーパイプも新規に作り直し溶接された。ブラケット類はもとのパイプから移植した。
●フレームの修正作業等が終了しエンジンその他補器類が装着されほぼ完成。この後外装も装着され試乗を繰り返した。ノーマルでもすばらしく楽しいZだがカスタムもそれに負けじと楽しいもの。ただいつも言っていることだが安心して安全に乗れて初めて楽しいカスタムと言えるのではないだろうか?流用カスタムのメリットは多々あるがそれらをきっちり機能させるのであればポン付けではなくそれなりの手間暇が必要となる。いじる側も命を預けているものだと言うことを我々も含め忘れてはならない。