ザッパーにこだわるオーナーが当社のコンプリート車両レベルとしてのリフレッシュをオーダー。
Z1、2に対して扱いやすさと軽快さを主眼に完全再設計されたと言えるこのバイク。(マイナーチェンジではないところが凄い)その完成度とバランスの良さは目を見張るものがある。ザッパー系エンジンはマイナーチェンジを繰り返し、現行車でもZR−7やゼファー750に搭載され、車体自体も同一のコンセプトで設計されている。そのルーツともいえるこのバイク、PAMS流に料理してみました。


●シルバーエンジンのザッパー、ウェットブラストによりエンジン肌を再生し、内燃機加工に入る。

●ザッパー系エンジンのクランクシャフトは現行車の殆どが採用する一体式、ニードルベアリングを使用して組み立ててあるZ系のクランクとは異なる。
コンロッドは分割構造で脱着出来る。これに対してZ系は一体式でクランクシャフトに組み込んである。
どちらの構造にもメリットデメリットがあるのでどちらが良いとは言えないが、エンジン自体の性格の違いにもなって現れる。

●クランクからの動力取り出しはプライマリーチェーンと呼ばれるベルト状のチェーンによって行われる。この構造は最近までのカワサキ中排気量車に採用されていた。対してZ系はクランクのウエイトに直接ギアが刻まれてクラッチバスケットに動力を伝える。当時のカワサキの基準としては、軽い吹け上がり重視の車種にはベルト式チェーンの構造が採用されていた。

●ケース内部の基本構造はZに非常に似ている。これらは最近のゼファー750や400まで引き継がれる。
クラッチ廻りに注目、ハウジング部が総アルミ製だったり、ギア部がZ系より小型なのがわかるだろうか?
ムービングパーツの軽さもエンジンレスポンスの鋭さに一役買っている。

●クランクケースのクランクホルダ部に装着されたクランクメタル。エンジン回転時にはこのメタルとクランク軸との間のオイル膜によりクランク自体はメタルからフローティング状態となる。寸法的精度が要求される為、プラスチゲージと呼ばれる測定材を使ってメタルのクリアランスを確認し、厚さが何種類もあるメタルの中から最適なものを選択する。ちなみにメーカー量産時にはいちいちそんな作業は行わない。これらの作業をマメにこなすことで意識的にあたりエンジンを作り出すことが出来る。更にメタルはゴミや金属粉等の侵入が大きな問題になるのでケース内部は慎重に鋳造バリ等が取り除かれる。
●クランクシャフトを乗せているところ。既に組み付けられているコンロッドメタルのクリアランスも完璧に調整済みだ。 ●究極のSTDエンジンを作る為に取り寄せられた新品のオーバーサイズピストン。ボーリングも終了し、僅かな歪みをも取り去る為の面研を行った。
●おお、インナーシムじゃんってザッパー系は元々この構造。ムービングパーツの軽量化はこんなところにも現れているのです。 ●ケースが閉じられ、ピストンが組み付けられた状態。こうなるとZ系エンジンとは見た目にそうは変わらない。
●ちょっと休憩、先に述べた通り内部構造的に埃の侵入には特に気を使うので慎重に扱う。もちろんZ系も同様だが、最初のZ系はエンジン整備時の埃の侵入に対して耐久性を持たせる為にクランクに機械式のベアリングが採用されたとの事。 ●ヘッドまでが取り付けられた。ウェットブラストされたアルミの地肌が美しい。まるでオブジェのようである。
●エンジンと並行してフレームのリフレッシュ作業が進められる。分解中のショット。Z1のフレームとパイプワークは基本的に同じ。ところどころのパイプはZ1より太い!ネック廻りは更にプレートにより強化されている。Z1からのノウハウが生かされている。 ●レイダウン、ピボット部の補強、スイングアーム補強とパウダーコートが施されてグレードアップされたシャーシー。もちろんレーザー測定により製造時に生じた歪みさえも取り去ってある。今回は全体の補強はあえて行わない。ノーマルフレームの強度と剛性がエンジンに対して必要かつ充分なのと、可能な限り軽量なシャーシーを狙った為。全てはバランスなのだ。

●これが通称ザッパーステム。デザインはKZ系のものと全く同じ。フォークオフセットだけが60mmから50mmとなっている。Z900〜MKII迄にはそのまま流用が可能で、18インチ化した際等、特にハンドリングの安定には絶大な効果がある。どうしてそうなるか知りたい人は個別に問い合わせるか掲示板にて問い合わせてください。ここには書ききれないので。
当時流カスタムを行う為に探し廻っている人は多いがなかなか出てこない。

●足廻りが組み付けられて立ち上がった。エンジンを搭載すると既に立派なバイクの形である。船で言えば進水式ってところでしょうか?

●フロントはアルミリムに組み替えて18インチ化。
フロントホイールにはKZ系と全く同じ部品が使われている。
ブレーキはシングルのままだが車体が軽量なのでよく効きます。

●各部のボルトやナットも組み付け時に新品に交換。
完成時のオーラが違ってくる。
●パウダーコートでリフレッシュされたパーツが次々に組み付けられていく美しいの一言。 ●新品のハーネス(FX1改)、点火系にはDYNA 2000により現行車レベルに、CRキャブも取り付けられた。点火の儀式直前のショット。
●リアホイールももちろんアルミリムに変更し、ちょっとだけワイド化。でも実はドラム仕様のザッパー用ステンレススポークはメーカーラインナップにも存在しない。(しかもワイドリム用)ドラムハブ自体がZ1より小さいのだ。どうしたかと言えば他社種の流用。何台分ものスポークを仮組みして探したのでえらく手間がかかってしまった。

●ケース各部もバフがけして組み付けられる。新車を上回る輝きとなった。
この輝きと仕上がり感は分解して組み上げたからこそですね。

●ついに完成。火入れの儀式が挙行された。音を聞かせられないのが残念な位。現行の空冷エンジンの新車をも上回るメカノイズの低さと軽い吹け上がり。
これを旧車とは呼ばせない。サスペンションはワークスパフォーマンスのアルミトラッカーでちょっとケツ上げ、ただしこれは上げ過ぎ、試乗後に下げました。
●完成を待ちかねたオーナーとご対面。これから慣らしと足回りのセッティング。