まず、ウオタニに限らずDYNA2000等、市販の点火系ではアースコードが専用に設けられているものが多く、エンジンブロックもしくはバッテリーマイナスに接続と指定されているものが多いです。
時々原因不明にエンジンが停止するという事であれば、まずこの部分も点検する事をお勧めします。
さて、これはASウオタニフルパワーキットのアースコード。
ユーザーご自身の手で取り付けされたものですが、やはり時々エンジンが突然停止し、しばらくすると復帰すると言う様な症状があるとの事でした。
保護被膜を切ってみたところ、一見コードそのもの見た目には異常は無く、端子からコードを引っ張っても抜ける事はありませんでした。
ただ、配線被膜のみを抑えている側のカシメを起こしてみてから、コードを引っ張ると、さほどの力でなくともずるっと抜け取れてしまいました。
この場合、端子被膜を抑えている部分(銅線には触れていない)への圧力のみでコードを抑えていた事になります。
抜けたコードの銅線部分をアップで見てみると、端子との接触部分が焼けている事がわかります。
どうもやはりカシメが弱かったようで、銅線は差し込まれて触れているだけだったのでしょう。
例えば、信号線であれば触れているのみでも問題は無いのですが、点火系や先日紹介したジェネレーターからの三相交流の様に大きな電流が流れる線の場合、端子や導線の接続部分の圧が弱いとこの様に接触部分に焼けが起きて抵抗が発生します。
それを繰り返す事で銅表面に焼けによる絶縁膜が発生し、時々接触不良によりアースの出来なくなった点火系が瞬間的に機能を停止するといった症状が発生する事があります。
ちなみにウオタニのフルパワーキットを例にすると、エンジン始動の瞬間が最も大きな電流が流れるとの事でこれが約10A前後なのだそうですが、これはH4ハロゲン球のハイビームの定格消費電力の約2倍というかなり大きな値です。
この瞬間的な電流が、カシメの甘い銅線表面を焼く事を繰り返し、それがある限度を超えた時に点火系のダウンが起きます。
当社でもエンジンが停止するという事で送られてきたイグナイターユニットを点検しても異常が無い場合、アースコードをカシメ直してもらうと症状が出なくなった例は結構見ます。
さて、イグナイターに限らずですが、アースコードをカシメする場合は少し長目に被膜を剥いて、この様に折り返してからカシメてやると、同じ力でもより確実に銅線を端子に密着させる事が出来ます、又、折り返し部分先端が出る様になっているとかなり大きな力で引っ張っても抜ける様な事がありません。
更に、念の為に半田付けする場合は、被膜部分をカシメる前にコード先端から流し込む様に、こうすると被膜を熱で溶かし難くなります。
更に、樹脂シールタイプの収縮チューブでカシメ部分をコートする様に保護しておけば、水分による腐食や振動による折損も防止できます。
アースコードはエンジンブロックにバッテリーコードと一緒に共締めされる場合も多い為、雨等による対策はしておけば安心できます。
以上のアースは点火系に限らず充電系やインジェクション化の際のECUやフューエルポンプのアースについても同様です。
電気系のカシメや固定はオートバイが止まってしまう可能性が高い為、この部分のコードを加工する場合は確実に行ってください。