これは純正のJ系インシュレーター。
抜け留めリップの丸い16065-1135の方です。
Z系に社外キャブレターを装着する場合にもよく使用されています。
又、SUZUKIのGS系エンジンに、社外キャブを膠着される際にもよく流用される事があるとも聞いています。
実はこのJ系インシュレーター。
海外のサイト等で良く売られているリプロ品に比較すれば遥かに品質は良い方なのですが、それでも1年,1万km程度も使用すると下の写真の様に結構シール部分が痛みます。
左が使用後、右は新品ですが、シールリップ部分が内側に向かって膨張してしまい、一部は裂けてしまっているのがわかります。
この状態で2次空気を吸ってしまっているわけでは無いのインシュレーターとしてのシール機能はまだ満たしてはいるのですが、明らかに内径が狭くなっています。
という事は、エンジン製作時にインテークマニホールドの段差をきちんと取れる様にヘッド側やインシュレーターの加工を行ったとしても、使用している内にインシュレーターの部分が一部細くなって段差が出来てしまうという事になります。
写真のインシュレーターでは、直径で約4mm程小さくなっていますが、こうなると性能にも影響が出ますのでZ系やJ系エンジンのチューナーには悩み所で、中には数千km走行毎に交換すると言う人もいます。
元々インシュレーターのゴムは耐油性の高いものが使われてはいるのですが、ガソリンに常時晒されて濡れるとそれでもどうしても膨張します。
この際外側には逃げ場が無い為内側に向かって広がり、更にガソリン成分が揮発して熱で乾燥する際には硬化する為、それを繰り返すと変形度が蓄積されてこの様な状態になります。
こちらは、内側に向かって楔の様な形になっている角リップの16065-1131の方です。
数年前に金型が再製作されましたが、ゴムの質に関してはさほど変化が無く、やはりリップ部分が内側に向かって膨張する傾向は変わりません。
バイトンやシリコン系の合成ゴムであれば耐熱や耐ガス性には勝るのですが、機械的な強度や特性についてはインシュレーターに使われているNBRの方が勝る為、そちらへの変更は出来かねます。
又、リップ部分の変形を防止する為に、近年の車両のインシュレーターはこの様にアルミのベースに加硫成型して、シール部分はOリングで行う様になったものも増えています。
この方法であればシールリップ部分の膨張や変形はしないのですが、この場合チューニングでポートを拡大するにはせいぜい1mm以下で、溝部分迄広げるとリングが内側に向かって滑り落ちてきます。
更に、Z系とJ系ヘッドではポートの大きさの違いからシールの為の理想的なOリング径が異なりますので、両方に使用可能なインシュレーターとする事は出来ません。
この為、弊社でインシュレーターを製作する場合はあえて旧来のリップ方式を採用しました。
ただ、純正インシュレーターのリップ部分の変形に関しては以前から問題を認識していましたので、ゴムの選択やテストには非常に長い時間をかけました。
数種のゴムで多数のサンプルで製作したものを、純正品と比較しながら数か月間ガソリンに漬け込んで乾燥や加熱を繰り返し、エンジンに装着して 当初の企画発表から年単位で の長期テストを行っています。
それにより、純正インシュレーターに使用されているものより確実に耐ガス耐久性がある事を確認した上で量産に入る事としました。
ちなみに、下の写真は弊社製インシュレーターと1135タイプ純正インシュレーターを同時に10日間ガソリン中に置いたものの膨張比較です。
各々の写真で、左側は新品、右側がガソリンで浸したものです。
純正の1135インシュレーター 金属板の入っていないキャブレターの挿し込み側は特に大きく膨張して、挿し込み部はユルユルになってしまいました。
更にこの後乾燥させると元の寸法より収縮し、全体的に硬くなってしまいました。
弊社製素材のテスト中
僅かな膨張が見られるかと思われるレベルに収まっています。
この後乾燥させると、完全に元の寸法になりました。 硬化も見られません。
ちなみに、量産品に使用するゴムでは更に膨張率は低く抑えられています。
ちなみに、弊社インシュレーターの特徴として、キャブレターの同調や負圧コック使用時の為にバキュームパイプを標準で備えている事が最も大きいのですが、実はリップの形状や寸法も若干変更しています。
Z系からJ系迄広く使用できる様、リップの幅を広げています。
これは、チューニングエンジン等でポート内径を拡大して行くと、シリンダーヘッド側の穴が大きくなった分シールリップがヘッド側に接触しなくなってしまうので、それを防止する為です。
これによって、かなりの大口径迄ポート拡大しても確実にポートをシール出来る様になります。
弊社製インシュレーターは、日本国内での生産です。
順調に行けば2月後半よりデリバリーが開始出来るかと思いますが、入荷時期が確定しました時点で又お知らせの方をさせていただきます。