Z系エンジンは、それ以降の車両に比較してオイルラインの油圧が非常に低い事は割と周知されています。
例えば暖機後でオイルが適温になった状態でのアイドリングではカワサキ純正油圧計のスケール表示ではほぼゼロで、専用スケールのもので無いと数値を読み取りにくい程度になります。
この事から、油圧が低い=問題 であると受け取ってしまう方も多いのですが、本来重要なのは圧力では無く流れるオイルの量です。
過去にも何度か記事にしておりますが、油圧が非常に低いからと言ってオイルが流れていないわけではありません。
むしろエンジンの稼働に必要十分なオイル供給量には達しているのですが、ニードルベアリングクランクシャフトと言う構造でオイルライン末端で放出される出口部が広く解放されているが故に、測定した油圧が低くなっているわけです。
従って、弊社としてはZ系エンジンの潤滑においては、その構造上純正のギアポンプが正常で、流量を確保出来ていれば充分に性能を発揮出来ると言う考えです。
ただ、それはもちろんポンプ自体の機能が正常であっての話で、摩耗消耗してしまったオイルポンプは本体内部のクリアランスが大きくなってしまいます。
こうなると、圧送力が大幅に低下してしまいます。
長年使用したものはボディそのものが摩耗してしまうのですが、それを機能回復させるには技術的に可能でもコストが現実的で無いものになります。
その為、消耗したオイルポンプはアッセンブリー交換するしかありません。
過去には純正の新品オイルポンプを取り扱いもしておりましたが、3年半程前にカワサキからは販売終了となりました。
ちなみに、その際の記事リンクが下の物です。
さて、その際の記事にて実は弊社独自のオイルポンプ企画のスタートについて触れさせていただいておりました。
少々昔の話でしたので既にお忘れの方も多いかとは思いますが、実は何年も以前から試作と実験検証を繰り返しながら仕様を確定し、そこからも更に耐久性のテストを繰り返しながら販売に向けて製作を進めてきました。
エンジン内部に組み込む言わば心臓とも言える重要機能部品でもありますので、設計にボディの鋳造から熱処理に精密マシニングに至る迄と内部ギアの製作迄の全てを国内にて行い、それらは全て国産の2輪4輪車の純正部品や車両開発時の先行試作品を製作するメーカーにて行いました。
単なる純正品のリプロダクションに留めず、細かな部分に当時の純正部品を上回る為の工夫を盛り込んでいます。
寸法精度を現代基準の工作技術を投入し、品質面において向上させるのは大前提として、ギアやボディは数種類、試作とテストを繰り返して比較の上で決定したのがギア幅の変更による容量アップです。
ノーマル車両はもちろんですが、空冷Z系車でオイルクーラーを装備した場合、潤滑の為のオイルラインを通す前に一度シリンダーヘッドより高い位置までオイルを押し上げる必要がある事と、現代の化学合成油を含むマルチグレードオイルを使用する事を考慮して、圧送容量は純正比で約13%アップがベストバランスとしました。
更なる大容量化もテストしましたが、クランクケース側のオイルラインを加工等出来なければそのメリットが薄くなる場合がある事と、ポンプ駆動にはエンジン出力を少なからず使う為、必要以上の大容量化は抵抗になる事、又それによりポンプ側の軸部自体への負荷が増えれば寿命にも影響が出ると考慮してこの値としました。
又、耐摩耗性に関しても素材から見直していますので、純正より長寿命が期待できますが、適度な圧送量アップ分も長年の使用には良い方向に働く事かと思います。
実は既にポンプ自体の開発は完了し、量産体制に移行中です。
価格の確定や、発売とご注文の受付開始時期についてはまだ何時と明確にはいたしませんが、追って公表させていただきます。