完成した量産仕様の弊社オイルポンプを検査する前に、純正のオイルポンプの場合はどの程度の数値になるか、同一車両を使用して事前に測定します。
まず、サービスマニュアル上でのオイルポンプ点検の方法は、油温60℃にての油圧を測定し、3,000prmで約0.2㎏/㎠となっています。
この検査基準数値はZ1からZ1000J系、GPz1100迄変わりません。
公正なデータの為、同一車両でポンプを換装する前に同条件で測定します。
ちなみに、この車両のオイルポンプはカワサキ純正のポンプが入手可能な頃に新品にしています。以降の走行距離は数千m程度の為、かなり程度の良いものが入っている事になります。
60℃時にアイドリング中での油圧は0.06㎏/㎠
(メーター表示はMpaですが、分かり易い様に換算しています。)
Z系としてはこれで正常です。
更に油温が上昇し、様々な条件での走行を行ってもアイドリング中にオイルランプが点灯する様な事はありません。
マニュアル上にある3,000rpm時の油圧は0.224㎏/㎠です。
規定の0.2㎏/㎠は超えており、問題のある数値ではありません。
プレーンメタル支持のクランクシャフト車を基準にすると非常に低く思えますが、Z系の様にオイル末端の開放部隙間の大きなニードルベアリングクランク車の場合はこれが正常です。
詳細原理の説明は過去にも記事にしていますので、参照ください。
さて、弊社製オイルポンプに交換します。公正なデータとする為、オイルパンを開けましたが、オイルは回収したものを再度エンジンに投入します。
新品のオイルにしてしまうと銘柄やスペックが同じでも実際の粘度に違いが出てしまう場合がある為です。
新品交換直後のポンプはあたりが付く迄の間クリアランスは最小で、その分油圧が高く出てしまうのではこれも公平では無い為、1日程慣らしを兼ねてツーリングしました。
ポンプボディはアルミですので、数百キロ程度の走行で馴染みが出ます。
更に測定前にはシャーシダイナモ上で測定温度以上迄油温を上げてから下がる途上で測定します。
エンジン全体を温め、オイルも柔らかくなる様にする事で有利な結果が出る事を防止する為です。
そしてポンプ換装後のアイドリング中油圧は0.112㎏/㎠
回転数を3,000rpmに固定しての油圧は0.288㎏/㎠となりました。
サービスマニュアル上の規定油圧0.2は軽々クリアと同時に交換前の正常な状態でも0.224㎏/㎠でしたので、それも大幅に上回っています。
この数値は試作品でも出ていましたが、量産仕様品でも同じ性能を出せている事が確認出来ました。
さて、オイルギア幅の増加は13パーセントとしてあるのに対して 同一条件で油圧は29%程度上がっています。
これは、後期仕様のメーカー純正品に比較して、オイルポンプ内部の加工精度を大きく引き上げた事によるものでしょう。
本来あるべき新品性能によるものも大きいかと思います。
又、この油圧数値は使用しているオイルの粘度規格や油温によっても変わる場合がありますし、実際のエンジンでは”油圧”イコール”オイル流量”ではありません。
ちなみに、試作段階ではこれより大容量となるギア仕様も試しました。
但し、油圧は確かに向上する反面、それによりポンプ側の駆動ロスが増加すればクランクシャフトで発生するパワーをその分余計に消費したり、ポンプそのものも消耗が早まる事があり得るのではないかと考慮した結果、必要十分とされる純正新品時にプラスでオイルクーラー装着時にもその高さまでスムーズにオイルを押し上げてやれる程度の容量アップに決定しています。