これはどちらもクラッチケーブルです。
手前は、Z用として現代市販されている一般的なステンレスケーブルを使われているもの。
奥側の物は、先日記事にした、弊社で研磨済みケーブルを使用して製作したワンオフタイプです。
どちらも新品で、ワンオフのものはインナーのみを交換していますので、アウターチューブは全く同じものです。
(ワンオフ側の方は、フレームに沿う部分のスプリングガードのみ取り外しています)
さて、クラッチケーブルのフリクションは曲がっているところでインナーとアウターチューブ内側が擦れる事によって生じます。
この為、上のクラッチケーブルを真っすぐ垂らした状態でタイコ部を押し引きして動かしてみても殆ど違いを感じる事は出来ません。
厳密に言えば研磨ケーブルの方が軽いので違いはあるのですが、手で摘まんで引き上げるレベルではグラム単位の違いを認識するのは困難です。
そこで2本共、同じ直径で丸めてみます。
この状態でインナーを動かすと、アウターチューブに擦れながら移動する為、フリクションの差を確認出来ます。
実際にタイコ部分を摘まんで前後に動かすと明確にフリクションの差を感じる事が出来る様になります。
但し、写真や動画で滑らかに動くと言っても伝わり難いので、数値データで表示出来ないか電子量りを使って、タイコ部分を押してみます。
まず、摩擦係数と言うものは荷重をかけて止まっているところから動き出す瞬間が最も高く、これを静止摩擦力、動いている最中を動摩擦力と言います。
物を押して動かす時には動かす迄が大きな力が必要で、いざ動き始めるとそれよりは軽い力で動かせる事はだれしも経験したことがあるでしょう。
まずは、市販そのままのケーブルです。数値が上下するのは時々ケーブルが止まるからです。
測定すると、静止状態では最大で約130g 動的には90〜110g程度となります。
そして、ワンオフ品に使う研磨ケーブルの場合
こちらは静止状態で最大84g 動的には55〜75g程度となりました。
この状態で、ワンオフ用の研磨済みケーブルを使用した場合は、静止摩擦,動摩擦共に従来品の65%のフリクションという事になります。
基本的に基本的に摩擦係数は荷重では変化せず、フリクションは荷重に比例します。
この為、実際にクラッチケーブルとして使用した際に内部で生じるフリクションの対比も、上の実験のそれに近くなります。
先日の記事中で、チューニングエンジン用のハイレートクラッチスプリングを組み込んであっても、指先でクラッチレバーを操作できるのは、握り始めに大きな力を込めなくともレバーがスムーズに動き始めるからであったりします。
http://www.pams-japan.com/diary/?p=24928
又、こちらのインナーケーブルの場合、実はメリットはローフリクションのみでは無く、他にも使用メリットがありますので、機会があればそちらも紹介します。