圧縮復元性の高い発泡NBRゴムを金属シートの両面に生成させてある、シール性の非常に高いNBRガスケット。
弊社ではクランクケース周り用のセットとしてZ系J系用共にラインナップしています。
ちなみにケース周りのものはそれ程厚さは必要無く、むしろケース周りの剛性を考えればシール性が高ければなるべく薄くしてやった方が有利なのですが、ポイントカバーについては整備の為の脱着頻度や内部部品のカバーへのクリアランスが純正の様に厚い場合を前提に設計されている事もあって、厚手にする必要があります。
但し、このNBRガスケットシートは厚手のものの場合ゴム層の割合が高く、通常のプレスカット型では断面の歪み率が大きくてなかなか綺麗にカットするには難易度が高いので、カット用の金型を通常のガスケット用とは異なるものを新規に製作しました。
この為、カット断面の歪みも最小限となり、非常に綺麗で組み込みも行い易いものになっています。
さて、同時に新規金型で製作しているのはZ1000J系用のヘッドカバーガスケット。
Z1系のヘッドカバーガスケットは既にカーボングラファイトで製作販売していますが、J系のものは現状手に入る純正品もカーボングラファイトですので、同じ材質のもので製作する必要も無いかとラインナップはしておりませんでした。
ちなみに、カーボングラファイトとNBRガスケットを比較した場合、通常の使用環境での耐オイル漏れ特性については同等。
違いと言えば、長年の熱による経年劣化についてはカーボングラファイト、整備時の剥離性についてはNBRガスケットが優れています。
又、カーボングラファイトの場合は当たり面にしっかり貼り付きする事で更に漏れを防止しますが、NBRは貼り付きし難く、発泡ゴムの柔らかさで当たり面表面を押さえる事で漏れを抑えていますから、カバーの取り外し時にガスケット当たり面にNBR層が剥がれて残る事がありませんので、作業性が非常に良好です。
対してカーボングラファイトガスケットは、カバーを開ける頻度が10,000〜20,000km単位のストリート仕様であったり、車両の使用頻度が少なければ5年以上でもオイル漏れをさせたくない場合に向いています。(10年経過後も漏れの無い車両も確認しています)
それ位の整備間隔であればガスケット清掃の為の手間はそれ程大きな問題では無く、オイル漏れの長期防止が主目的となるからです。
それに対し、NBRは特にチューニング車等で頻繁にカバーを開けて整備やバルブタイミングを調整したりする様な車両、もしくはサーキットでガスケット清掃の為の時間も短縮したいレーサー等にも向いています。
更に、Z1000J系や1100系の車両の場合、ヘッドカバーがチェーンスライダーを兼ねていると言う構造上の理由からガスケットを挟んでもカバーのマウントに剛性が必要となりますので、その部分では有利です。
とは言え耐久性面も重視したい為、ヘッドカバーガスケットに使用するNBRシートは特に耐熱性や圧縮復元性面で大幅に優れるものを使用しています。
これは、クランクケース部分より状況によっては100℃も高くなる使用環境を考慮してです。
ちなみに、弊社Z1000Jがほぼ毎週の様に遠方迄の走行を繰り返してテストしているパーツには、実はこのNBRヘッドカバーガスケットも含まれています。
NBRのゴム層素材は同一でも、芯材シートの厚さや素材も様々なものに変更しながら、カバーの開け閉めを繰り返し、既に万単位での距離を走っています。
ちなみに、今回点検しているこのガスケットは数千kmの間に5回の開け閉めをあえて無交換のままで行っています。もちろんガスケットの再利用は推奨できるものでは無いのですが、今のところNBR表面の剥離や裂けは発生していません。
こちらのJ系用ヘッドカバーガスケットについては、初夏のシーズン迄にはデリバリー開始の予定です。