先日、バルブスプリングに使用されるスプリング鋼の進化により、弊社製のものは20世紀時代の物より大幅に耐久性が上がっており、性能劣化が起き難い事を記事にさせていただきました。
http://www.pams-japan.com/diary/?p=30096
又、同じ理由により、昨今のバルブスプリングは巻き数を少なくする事が可能になり、セット荷重等の設定を同一にしても動弁系を軽量化する事が可能になっています。
さて、実際にどの程度軽くなっているか、実際に測ってみます。
これは純正のZ1000J,Z1000R系の純正スプリングと、弊社のESバルブスプリングタイプSとの比較です。
慣らしが終わった時点でのセット荷重やリフト荷重はほぼ同じですが、タイプSの方が巻き数が少なくなっている事がわかります。
さて、従来のチューニング手法として、動弁系の軽量化の為にZ1〜Z1000J系初期のアウターシム方式のリフター周りをゼファー750や1100に使用されているインナーシム用リフターやリテーナーに交換してやる事で、軽量化を図る事があります。
使用するリテーナーについての選択方法は、以下の記事になります。
http://www.pams-japan.com/diary/?p=9126
実際にどの程度軽くなるかといえば、バルブスプリング以外の部品を測り比べるとわかります。
純正アウターシムの場合、63.6g
インナーシム化で56.6g
バルブスプリングが同じであれば7g程軽くなる事になります。
バルブ周りはエンジン回転数の1/2の回数上下を繰り返し、例えば6,000rpm時には毎秒50回上下しますので、かなりの差になります。
但し、インナーシム化した場合はバルブクリアランスの調整の為のシム交換を行うにはカムシャフトの脱着が必要になりますので、整備性の悪化が少なからずデメリットになります。
又、それを繰り返し行うと、ヘッド側のカムホルダーを固定する雌ネジは都度痛むため、ヘッドの寿命にも関わってきます。
さて、上のインナーシム化はあくまでもバルブスプリングが同じ場合です。
バルブスプリング自体が軽くなった場合はどうなるかです。
単純に重量を比較すると、純正のインナーとアウターセットで62.2g
タイプSセットの場合は、54.6g
その差は7.6g、タイプSの方が軽くなっています。
純正スプリングでインナーシム化した場合の重量は、合計118.8g
ESバルブスプリングタイプSをノーマルアウターシムのまま使った場合は合計118.2g
僅かではあるのですが、スプリング交換しただけの方がインナーシム化よりも軽くなっています。
ちなみに、不等ピッチのバルブスプリングをエンジンに組み込みした場合、バルブリフト時に上下しているのは巻きピッチの荒くなっている上側となりますのが、タイプSは特にその部分がピッチ幅が大きく軽くなっている為、実際の運転中にはもっと差が大きくなります。
この為、当方がエンジン整備のメニュー立てを行う場合、STDカム〜ST1クラス程度のカムを使用するのであれば、整備性や耐久性の面からアウターシムシステムのままでバルブスプリングのみをESバルブスプリングタイプSを使用する事を推奨する事が多いです。
組み込みするのみでインナーシム化以上に軽量化が可能になる為です。