アウターシムとは、1970年代初頭のZ1,Z2から2005年式のZ1000P迄の空冷Z系の殆どの車両で使われたバルブクリアランス調整方式です。
文字通りバルブリフター(タペット)の外側上部に大きなシムが乗る形式がそれに当たり、そのシム自体がカムシャフトの摺動面を兼ねます。
このタイプだと、写真の様にリフターを下げたまま保持する専用工具を使って、カムシャフトは取り外す事無くバルブクリアランスの調整が出来ます。
それに対して、インナーシムとはリフターの内側、バルブステムの上に小型のシムが乗る方式です。
シムの外周が小さい分軽くなる事と、リフトの多きなカムで高回転域のスプリング追従が悪くなった際にアウターシムをカムが掻き出してしまうという重大なトラブルの可能性は低くなります。
但し、バルブクリアランスの調整の度にカムチェーンテンショナーやカムシャフトを取り外ししなければなりません。その為頻繁に作業を行うと、シリンダーヘッド側のカムホルダ―用雌ネジがどうしても傷んで来る傾向はあります。
フラッグシップモデルとして性能重視されたGPz1100やZ1100Rは純正でインナーシム方式が採用されていますが、その後も生産が続けられたポリスモデルZ1000Pがアウターシム方式を継続したのは、ピークパワーより車両の特性上整備性や繰り返し調整した場合の耐久性が重視された為ではと思っています。
もちろんレース用を含みハードチューニングを行うのに、それに適合したカムを組み込むのであればインナーシムが必須となる場合もありますが、以前記事にしました通り弊社のESバルブスプリング タイプSを使用すると、純正スプリングでインナーシム化するよりもアウターシムのまま軽量にする事が出来ます。
http://www.pams-japan.com/diary/?p=30131
一つの基準的には最大リフトで10.0mmを越えないレベルのカムで、極端に大きなバルブクリアランスが不要なのであれば、アウターシムのままセットアップする事で整備性やシリンダーヘッド自体の耐久性面で有利な側面があります。