写真は全てZ1~Mk2系迄に使用されている純正バルブスプリングです。
左から新品、15,000km程度使ったもの、そして30,000km程度のものです。
よくスプリングがへたると言う様な言われ方がする事はありますが、実のところばね素材の硬さが低下してレートが変化するわけではありません。バルブスプリングの場合は、長年使用して圧縮を繰り返している内に徐々に自由長が縮む現象が起きます。
するとシリンダーヘッドにバルブと共に組み付けた際のセット高さが同じだとして、自由長から縮める長さは相対的に少なくなりますので、その分バルブをシートリングに押し付けるスプリングのテンションは低下すると言う事になります。
さて、どの程度バルブスプリングが縮むかですが、これは未使用の新品です。
39.6mmあります。
これが15,000km程使用したものを測ると39.35mm、更に30,000km走行したものだと39.1mm 迄圧縮されています。
注※上記走行距離はあくまでサンプルです、走行距離が同じでも使用環境や走行中の回転数によって自由長の縮み率は同じにはなりません。
さて、サービスマニュアル上の標準値は39.3mm、使用限度値は38mmとなっており、その差は約1.3mmとなっています。
このデータからすると、未使用新品時には標準値より長く、ある程度の距離を走行してあたりがついたスプリングが落ち着いた状態が標準値、走行距離が増えて使用期間を重ねると更に少しずつ縮んでいくことになります。
ちなみにこの自由長が縮むとどの程度バルブにかかるテンションが下がるかですが、実際にシリンダーヘッドに組み着けした際の高さにインナーとアウター2本のスプリングを圧縮し、その反発力を測定すると、このZ系純正スプリングについては新品から15,000km走ったものでは1割程度圧力が下がっている事がわかります。
ただ、この低下分はむしろスプリングのあたりがついた時の標準数値とも言えますから、新品を組み着けした際にはむしろ理想値より大きな荷重がかかっていると言う事になります。
ちなみに、Z系純正のバルブスプリングの素材は40年前に市販車に普及していたもので、現代のものに対して使用期間に対する縮み量は多く、この為使用限度迄に1.3mmもの幅が持たされています。
従って、40年分進化した現代のスプリング素材を使用して使用期間による自由長縮み率の少ないバルブスプリングであれば、最初から純正スプリングであたりが着いた際の数値により近く設計してやる事が出来るわけです。
現在先行量産品を検査中のPAMSエッグシェイプバルブスプリングは、それを前提に設計しています。
この為、フルスタンダードエンジンのオーバーホール時に組み込んだ場合でも最初からエンジンは軽く回り、その分バルブやシートリング、カムメタルやカムはもちろんカムチェーンやアイドラーへの負担を減らす事で消耗を抑える事が出来ます。
又、素材自体が昔の物にも比較して大幅に耐久性が向上していますので、自由長の縮み率も非常に緩慢で、長期に渡って使用してもばねテンションは低下しません。バルブジャンプ等のトラブルも回避出来るでしょう。
長年思い描いた理想のバルブスプリングは、チューニングパーツとしてのみでは無く、ノーマル車両の性能を向上させながら消耗自体抑える事も目的として作っています。