内燃機加工のご依頼でお預かりしているシリンダーヘッドです。
元々バルブのセット位置がかなり沈んでおり、更には燃焼室側にも加工が施され容積が必要以上に大きくなっていたものです。このままでは、想定した圧縮比を実現する事が難しいため、シートリングの製作&入れ替えというメニューになりました。
元々、J系を除く空冷Zのシートリングは「鋳込み」タイプとなっています。ところが当時の鋳込み技術の低さからなのか、シートリングの鋳込まれる位置に結構な個体差があります。ポートとの段付きに個体差があったり、比較的大きかったりという理由の一つかもしれません。
ご覧の様に、シートリングを均等に削り落として行っても、内部の偏芯によりキレイに削りきれない事も珍しくありません。
更にこのヘッドは上取り周辺にも既に加工が施されており、通常のリング交換を行うとリングと燃焼室の段差が大きく出てしまう可能性があります。
通常よりも外周を大きく作ったシートリングを圧入し、極力燃焼室側の形状に影響が出ない形に。赤くマーキングした部分は、それによりINとEXのシートリングが重なります。そしてお気付きの方もいらっしゃるかと思いますが、
当然ヘッド面側にもリング外周部分が突起します。勿論、後に面研によって修正後に燃焼室容積を計測。想定した圧縮比に近づける為、更に容積指定面研を施します。
やはり、生産から数十年も経過すれば、今日に至るまでの扱われ方、メンテのレベルもそれぞれ異なりますから、臨機応変、個体差に合わせた修理そして加工を都度考えながら進めてゆかねばなりません。
マニュアル通りにはいかない事も多いのです。