各種カムシャフトのカーブデータは、以前にも記事にした通りその都度なるべく取る様にしています。
http://www.pams-japan.com/diary/?p=8864
さて、今回は作用角について。
カムシャフトに付属するスペックシートや、純正カムでもサービスマニュアルに作用角は何度と言う風に記載されています。
これは、カムシャフトの山の幅をクランクシャフトの回転角度で表わしているものです。
ところがこの作用角というものも各社各種によって表記の仕方がまちまちで、あるメーカーが1mmカム山のリフトが始まってから戻りの途中閉まる前の1mmリフト迄の角度であったり、これがUSAのカムだったりすると0.05インチ(25.4÷20=1.27mm)リフトでのものだったり、もしくはメーカー独自の作用角表記方法だったりする為、やはり同列に並べて比較する事が出来ません。
そもそも作用角が同じであったとしても、その途中のカーブ変化が異なれば同じバルブタイミングで組んでもエンジンの性格は全く変わったものになります。
さて以下の図面は、以前にも紹介した通り簡易な測定機材を使って0.5度刻みでカムを一周させてそのカーブを測定したものです。カムシャフトは一周する間にクランクは2周しますので、クランク角だと1度刻み、720度分と言う事になります。
比較しているのはメーカー違いで425,435と呼ばれるタイプの3本のインテーク
ちなみにこの3ケタは1インチ25.4mmに対して最大リフトが425/1000インチ、435/1000インチリフトという意味ですので、最大リフト10.78mm、11.05mmのカムという事になります。
この3本、正直なところカムのリフトカーブ自体には極端に大きな差異はありません。
もっとも大きな違いは、開き始めと閉じる際の早さ。
あるメーカーの425,435カム(赤と青の線)が、開き始めも閉じ終りもえらくゆっくりと僅かずつ開くのに比べ、別のメーカーの435カム(紫の線)は開き始めは一気に叩く様に開き、閉じるときもスパッと閉じています。
下のグラフの縦方向がカムのリフト量で、最小目盛りは0.2mmですが、これがチューニングしたエンジンのタペットクリアランス設定とほぼ同じとして、赤と青の線で表されるカムは、165度あたりで緩やかにバルブリフトが開始されるのに対して、紫の線のカムは147.5度で一気にバルブ開くという感じです。
水色と紫の↓の角度位置の違いを確認してください。
その差はクランク角度にして20度近く、カム一回転では40度にもなります。
ここまで開き始めと閉じ終りに差があると、エンジンの性格やフィーリングにははっきり現れます。
更にこの差は、ストリートチューン時にタペットクリアランスを小さ目にするとカーブの角度の違いを見る限り更に大きくなるでしょう。
一般的にレース用で使われる様なカムの場合、紫で表示される様なカムの方が多い様です。
但し、こういった開閉をするカムはどうしてもカム山がタペットを叩く音や、バルブが一気に閉まる音も大きく出易く、シートリングやバルブの当たり面の摩耗も緩やかに開閉するカムの場合に対して早めに進みます。
又、バルブスプリングのセット荷重設定もより厳密に管理せねばなりません。
どちらがいいかという訳では無く、例えばストリートで長年長距離に渡る耐久性を重視するか、ある程度の寿命を割り切って性能重視としてレースに出る為か等、使用目的が変われば優先されるものは変わるという事です。
ところでこの3本のカムの作用角について。
いずれUSA製なので、リフト1.27mm時で作用角を表すのですが、この時点での各カムのカーブはほぼ重なっています。
この為1.27mm(0.05インチ)作用角データのみではほぼ同じという事になってしまいます。ところが実際に使うと上記の理由で明らかに性格は異なります。
従って、カタログシートでの作用角がほぼ同じでも、カーブを全体に見て重ね合わせでもしない事には、比較は出来ないという事になりますね。