以前にも記事として記載しましたが、ピスタルピストンを含むZ1系エンジン(Z1000Mk2迄)のエンジンオーバーホールやチューニング時に参考として下さい。
750系のZ2等もこれらのデータは同じです。
弊社ではZ1,Z2系エンジンの新車時の寸法を下記のデータを基準としています。
Pistal Piston の設計時も同じデータを基本としています。
尚、これらの数値は、Kawasaki が設計した際のものを公表したものではありません。
弊社で20年程の間に測定した中での平均的数値ですので、それをご了承下さい。
シリンダーヘッド厚さ 105.0mm
ヘッドガスケットの当たり面より、上部のヘッドカバーガスケットの当たり面迄の高さです。
ちなみに、この数値はZ1000J系も同じです。
シリンダーブロック厚さ 89.55mm
ブロック下面(ベースガスケットの当たり面)より、ブロック上面(ヘッドガスケット当たり面)迄の高さ
純正ベースガスケットが組み込み前0.5mmだったとして、組み付け後締め付けられる事で10%圧縮されると0.45mm。 これとの合計で90.00mmになると考えると憶えやすいです。
Z1000J系はブロック厚さが少し厚いです。更にJ系は年式によって違いがあります。
クランクシャフトセンターから上面迄の高さ 86.0mm
クランクシャフトの中心軸から、シリンダーブロックが乗るデッキ面迄の高さ。
クランクシャフトのベアリングレースの半径が31mmですので、それを引くと55.0mm。レースのホールド部分の上側からデッキ面迄の高さを測定するとこの値55.0mmになります。
この数値はZ1000J系も同じです。
さて、これらの値より少なければ、シリンダーヘッドやブロック、ケースのデッキ面に面研加工が施されている事になります。
圧縮比を計算したり、エンジンを組む場合にはその分を考慮する必要がありますし、状態によってはヘッドガスケットやベースガスケットの厚さで補正する必要があるかも知れません。
ちなみに、Pistal Piston の設計時には、ヘッドガスケット厚さを1.1mm ベースガスケット厚さを0.5mm を基準として圧縮比を設定しています。
又、完全に無加工であると思われるエンジンパーツにおいても、上記いずれの厚さ数値には最大±0.1mm程度の高さ公差がある事が確認されています。
(1980年前後のものに多いです)
但し、個体厚さの偏差は0.01~0.02mmの間に収まっています。
シリンダーヘッド側の燃焼室容量 34cc
いくつかの新品のシリンダーヘッドに純正のバルブを装着して、測定油を注入した平均値です。
実測でこれより大きくなる場合は、シートカット等によるバルブの沈み込みが考えられます。
但し、新品のヘッドでも上下0.1~0.2cc程度の誤差は見られます。
ちなみにガイドを交換されていたりシートカットを繰り返されたシリンダーヘッドは2cc以上も容積が増えている場合があり、大幅に圧縮比が低下します。
計算上、シリンダーヘッドの容積寸法が同じZ1~MK2では圧縮の低下度割合は排気量が少ない車両の方が大きく、例えば750ccのZ2エンジンやノーマルZ1で2cc分バルブが沈んだ場合
750ccのZ2であれば9.0:1が8.37:1
900ccのZ1であれば8.5:1が8.03:1
1000ccのKZ1000であれば8.75:1が 8.26:1 に低下します。
面研を施された痕跡の無いシリンダーヘッドでも、シートカットによる大幅なバルブの沈み込みがある場合はシートリングを交換するか、増加分の容積を実測してガスケット厚さや面研で圧縮比を調整する場合があります。
又、チューニング等でハイコンプのピストンを使用してバルブ沈み分の圧縮比を回復させたり、社外カムシャフトによってはバルブを沈ませる様にヘッド側を加工せねばならないものもありますが、その場合でもピストンの仕様通りの圧縮比よりは低くなりがちな為、ヘッド側容積を実測して計算するのが望ましいです。