EFI化した車両の場合、ある程度の負荷をかけての走行状態から全開迄の領域の燃調や点火時期セッティングは、リターダーと呼ばれる負荷装置を備えたダイナモ上で行う事は出来ます。
ただし、ストリートでは信号待ち等の発進を含み、必ずゆっくりと進まねばならな速度域での走行がありますが、この領域の再現はいかに高性能なダイナモを使っても再現は非常に困難な為、実際の走行しながらログを採りつつ調整していく事になります。
さて、ストリートにおいての大型バイクがどの程度アクセルを開けて走っているかと言えば、スロットルボディやキャブレターの口径にもよりますが実は殆ど開いていません。
下の写真で、ブルーの□で囲んでいる横に伸びる黄色いバーグラフですが、これがスロットル開度を表しています。
例えば信号待ちや右左折を含み、渋滞も混じる一般公道を走った場合をシミュレートしてみたのが下の動画ですが、一瞬の加速時以外このサンプル車ではスロットル2~3%の極々微開度で走れてしまっている事がわかります。
この開度領域の走行は、キャブレターで言えばパイロットジェットの番手やエアスクリュー、パイロットスクリューで調整される部分ですが、同じアクセル開度2パーセントでも加速中かゆっくり走っているか、それともスロットルを閉じながら減速しているかでエンジンに要求されるガスの量は全く異なりますので、特に慎重に実走を重ねながらマップを修正しています。
キャブレターにしても同様なのですが、この領域を詰めるのは純レース用のセッティングとは違った手間が結構掛かります。
どちらが偉いという訳ではありませんが、サーキットオンリーの車両の場合、ストリートの様にアクセルを微開度で発進と言う事はまずありませんし、流す様に走るにしてもそれなりの開度とスピードで走ります。
又アクセルオフ時のエンジンブレーキの調整の為、アイドリング開度自体ストリート用に比較してかなり高目に設定されている場合も多いです。
ちなみに、1000cc級の車両で高速道路を法定速度プラスのツーリングスピードで巡航している場合にどの程度スロットルが開いているかと言えば、弊社でログを採ったものにおいてはほぼ全領域で5%前後です。
よくキャブレターのセッティングで1/4開度1/8開度といった呼び方をしますが、それが25%や12.5%となる事を考えると、ストリートではどれだけ小さな開度で殆どの走行を行っているかがわかります。
下のものが弊社Z1000Jで第三京浜を巡行した際のロググラフですが、5速3000rpm、80km/hを維持する為のスロットル開度は僅かに3.0%であった事がわかります。
だからこそこの領域のセッティングは、EFIにしてもキャブにしてもストリートであればこそ重視する必要があるわけです。