Z系を含むオートバイカスタマイズの手段として、オイルクーラーの装着は非常にメジャーなのですが、勘違いされがちなのが、オイルをとにかく冷やさねばと過度な冷却を行ってしまう事です。
エンジンオイルには、正しく仕事をさせるのに適正な温度というものがあります。
つい最近記事にしたと思ったのですが、既に2年も前の記事になります。
冬場にもバイクに乗られる方はちょっとだけ目を通して見て下さい。
http://www.pams-japan.com/diary/?p=3622
空冷エンジンの特性として、冬場でもシリンダーヘッド周りは早目に温まるのですが、Z系の空冷エンジンは後のスズキの油冷車の様に燃焼室裏やピストンの裏側にオイルを噴射して積極的に熱を吸収させているわけではありませんので油温の立ち上がりに関しては非常に緩慢です。
例えば公道を普通に流す程度で走行した場合、それなりの温度までシリンダーヘッドが温まっていても、今の時期であればオイル温度は40度台前半などという事はざらにあります。
かつ、過大なサイズのオイルクーラーを夏場の基準のサイズのまま使用していると、ストリートではいつまで経っても適温まで上がらないという事も起こりますので、出来れば油温を確認の上コアにカバーを装着する等の対策を推奨します。
さて、オイル温度が上がらないと何が問題か?
冷めたオイルは粘度が高い為、エンジン回転の抵抗になり、パワーのロスはもちろん燃費の悪化にも繋がります。
更に問題なのがオイルとしての性能劣化です。
例えば稼働中のエンジンは、必ず圧縮中の未燃焼ガスや膨張中の燃焼ガスがピストンリングの僅かなクリアランスを通ってクランクケースに吹き抜けますが、これらに含まれるガソリン成分や水蒸気はその多くがエンジンオイルに吸収されます。
油温が適温の90度位から100度前後迄上がればこれらはオイルから揮発してブローバイ取り出し部から放出されるのですが、温度が上がらなければそれも起きず、ガソリン成分でオイルが希釈されたり水分によって性能を発揮できなくなったり、長期に渡ってはエンジン内部部品の錆の原因となったりと良い事が無いのです。
もちろんオイルクーラーの装着自体を否定するものではありません。
限度を超えて油温が上がりっぱなしになると、Zが設計された時代に比較してオイルそのものの耐久性が上がっているとは言っても劣化は起こりますし油膜の維持の問題も起こります。
必要に応じて油温を管理する事が大事であるとご理解下さい。
高過ぎは良くはありませんが、過度に低過ぎてもエンジンにダメージを与える場合があります。
又、これも勘違いされている場合が多いのですが、エンジンがヒートするからと無闇に巨大なオイルクーラーを装着したいと相談される場合がありますが、オイルクーラーはあくまでエンジンオイルが性能を発揮できる適温以上に上がらない様に装備するのが主目的です。
油温を下げる事がヒート気味のエンジンの冷却には全く寄与しないとは申しませんが、エンジンが無用な程熱を持つ場合は、キャブレターによる空燃費や点火時期セッティング、又はカスタマイズされたエンジンであればチューニングのメニュー建ての内容そのものに原因がある場合が多いので、まずはそれの解析と対処が重要です。
人間でも同じ事が言えますが、平熱を上回って体温が上がるのは、体の中が何かしら正常では無い状態になっているわけですので、冷やす事はもちろんですがまず健康になる事、正しく管理する事が大事です。