シャシダイ上でエンジンを回しながらスロットルボディの作動状況を動画に収めてみました。頭の中では理解していた様で、実に想像の範疇だった映像でもあるかと思います。
後輪で軽く120PSオーバーなエンジンですので、吹け切るのも一気。ですがインジェクターから燃料が噴射され混合気となりポート内へと導かれる様子を映像として収めるためには、極力バタフライが全開となる必要があります。従って今回はリターダーにて軽く負荷を掛けた上、意識して4~5速を使い早めのスロットル開けを試みながら全開付近の時間を稼ぎ撮影に臨んでいます。
しかし動画を良く観ているとパーシャルから通常走行付近では殆どスロットルが開いていないのが分かります。
インジェクションシステムは、キャブレターの様にマニホールド内を流れる空気の量や圧力そして速度等に依存せずに燃料を供給出来るので、かなり大きなスロットルボアでも、一気に開けた際に息つきしない様セットアップする事も可能なのですが、エンジンスペックに対しての極端なオーバーボア(スロットル口径)は良いことが無さそうです。
特に微開度領域を多様するストリートでは全閉から僅かに開いた部分の理想空燃比が走行状態によって変化し易く、更にそれが顕著になるものと考えます。
何度かご紹介していますが、このスロットルボディは英国に在るAT POWER社製で空冷Z用に一品特注した物です。一番の特徴はバタフライの支持と駆動にシャフトを持たないシャフトレス構造です。シャフトやバタフライ固定の為のボルト等が存在しない為、ボア内に抵抗や乱流を生む突起物が最小限となり、より効率の高い吸気環境を実現しています。一般的なシャフトタイプとの同口径同士で比較した場合フロー率で7%以上の向上を果たすとの説明を受けています。
また、このスロットルボディは既にプロトタイプ2号機です。シャフトレスの構造の優位性とそれゆえのネガも抱えており、それらを克服する為現在は3号機を再設計の上製作中です。(現2号機は手作業にて修正済み)
このDIARYでも何度か申し上げたかと思いますが、空冷Zのインジェクション化は、一般的なキャブレター交換に比べ、コスト面も含めまだまだ敷居が高いと思っています。ただ要となるECUが性能の向上に反してリーズナブルな価格になり始めていたり、純正流用も含めてスロットルボディの選択肢が増えてくれば、少しずつインジェクション化も現実的になってくるのではないかと思います。
キャブレターのルックスや乗り味に拘るのも良しですし、そこへFI化という選択肢がまた一つ加わる事も、この先空冷Zを楽しんでゆく上でプラスに向いてゆくと考えています。
また、エンジンのイジり手側としては、キャブではどうしても出来なかったセッティング領域に手を入れられる事で、空冷Zエンジンの眠っていた潜在能力を更に引き出したいと言う想いもあります。
このスロットルボディはまだお話した様にあくまでもプロトタイプではございますが、以前よりお問い合わせ頂く機会も増えている事もありまして、更にテストを重ねた上で市販化も視野に入れています。