先日も作業記事にありましたが、現在Zのカムチェーンは弊社で取り扱っておりますジョイントリンクカムチェーンセットを使用する事で、ドライブチェーンの様にリンクをかしめて交換する事が出来ますので、エンジンをクランクケースまでを分解する必要が無くなりました。
さて、問い合わせでお受けするのですが、そのジョイントリンクカムチェーン使用時の注意点はと。
チェーンカットやかしめ作業そのものは専用工具に付属しておりますマニュアルをキチンとお読みいただければ失敗の可能性も非常に低くなっております。
それ以上重要なのは、カットした状態のカムチェーンを落とさない事。
写真の様に、細目でもかまわないので不要な導線で縛ってしまうのが最も間違いない方法です。
何せカットした状態のカムチェーンは、自重ですり抜けして簡単にケースの中に落ちようとします。一周繋がった状態ならまだしも、切れた状態のチェーンがケース内に落下すると、場合によってはエンジンを分解しないと拾い上げられない事もあり得ますし、かなり余計な手間を食う事になりかねません。
実際にはオイルパンを外してやればなんとかなりますが、オイルを抜く作業を含めて随分と余計な時間がかかるでしょう。
なので、「チェーンを落とさない様にする事」が、一番大事な注意事項とさせていただきます。
又、これは別の話で以前からも記事にさせていただいている事ですが、
「強化カムチェーン」について。
強化カムチェーンと聞くと、いかにも頑丈かつ高性能で消耗そのものも少なく、使っても伸びなさそうなイメージがありますが、強化の意味はあくまで耐荷重の大きさであって、伸びに対する耐久性には通常仕様のチェーンとの差はありません。
むしろ耐荷重が高い=プレートが厚く大きくなりますので重量は増えます。
この為、使用するカムやセッティングにおいて、その必要も無いのに強化カムチェーンを使用すると、増加した重さ分の慣性や遠心力によってカムチェーン自体の消耗はもちろん、アイドラーやテンショナーに無用な負荷をかけてしまう場合がありますので注意が必要です。
先日作業した車両に使用されていた強化カムチェーン。285g
交換使用したジョイントリンクカムチェーン。258g
10%程強化カムチェーンの方が重いです。
ちなみにジョイントリンクカムチェーンに使用しているDID 219Tは、各社のST1クラスのカムシャフトとそれに適合するバルブスプリングでは切れる様な事はまずありません。
例えばリフト量が10mmを超える様なカムシャフトを使用したり、連続全開が何時間も連続する様な走行を行うのであれば強化カムチェーンの出番ですので、それを目安としてください。