走行中に腰下より明らかな異音が発生し、不安を抱えたオーナーよりご相談を受けました。相談をお聞きした以上、万が一があると嫌なので緊急入院+オペとなりました。
オーナーからは、アウトプットシャフトを支えるベアリングの破損ではないか?との申告を頂いておりましたが、どうやら原因は他にあった様です。
単体にてお持込頂いたエンジンをスタンドにセットし、オイルを抜き取った後にクランクケースを割る用意を進めます。オイルパンにはそれなりのスラッジや金属粉が残ってはいたものの、何かが破損し大きな破片等が残留している様子はありません。
最初の異常を発見。本来はクリップが先端に付き、→方向へ入り込まない筈のシャフトが奥へ。しかも押せば脱落する位まで動きまたその形跡もありました。このシャフトは2本のシフトフォークを支える役割を持たされていますので、シフトドラムの回転と同時に横方向へスライドするフォークによりシャフトごと一緒に動いていた可能性があります。
ケースの内側から見ると、この様にシャフトが横方向へ移動しながら暴れた痕が確認できます。付いているはずのクリップはどこにも見当たりません。
クランクケースを分割した所ですが、見る限りトランスミッション周辺に大きな異常は無さそうです。
こちらも異音の発生源となっていた可能性のある二つ目の異常。クラッチハブのダンパースプリングが劣化により破断しています。このまま走り続けると、今度は破断したスプリングの破片がケース内で暴れまわる事もあり得ますので、このタイミングでの緊急開腹は正解だったと思います。
トランスミッション&クラッチハブをケースから外しミッションも全て分解チェック。
トラブルを見逃さぬ様に、ギア歯の一枚一枚、それぞれのクリアランス等をチェックしてゆきます。幸いな事に大きな問題は無さそうです。
取り外されたベアリング達。この際ですのでベアリング類は全て純正新品に入れ替えます。ダンパースプリングの破断その他にダメージが確認されたクラッチハブは、今回コンバートKITによりJ系ハブへと変更されます。
明らかな異音が発生した場合、騙し騙し乗りながら様子を見たりせず、大事へ至ってしまう前に先ずは原因追究と適切な処置が基本です。