いつの時代も新たな試みに否定的な意見もあれば、それを肯定的に受け入れてもらえるものと、大きく二手に分かれます。
特に歴史があり古くから愛されている物等には、一種のセオリーやルールがあり、その枠組みから外れる新たなスタイルや試みが受け入れられにくい傾向にあると思います。例えば本来のキャブレターからインジェクション化等は、その最たる物ではないでしょうか。勿論、伝統や守り抜かれた物を大切にしてゆくのも素晴らしい事ですし、この記事を書いている私自身も割と保守的なタイプだと自覚しています。
さて、弊社でも様々な角度からテストを重ねている空冷Zのインジェクション化ですが、周囲のご協力もありノウハウの確立と同時に様々なデータが集まりつつあります。また、何度か申し上げていると思いますが、インジェクション(フルコン)を勉強させて頂く中で、そのデータをキャブセッティングに活かす事が出来ると考えています。今まではどこか感覚的なものに頼っていた部分が、数値化され且つ再現性の高い確実なものへとステップアップしてゆける筈というお話。
画像上はインジェクション化された車両をセッティング中のデータロギング(記録)画面です。縦軸がスロットル開度、横軸がエンジン回転数、色の変化は空燃比です。因みににシャシダイ等での全開パワーチェック時に確認出来ている空燃比は、基本的に画面右上の水平部分でしかありません。この様にスロットルの開け始め、微開領域、パーシャル域、すなわち実際に街中で最も多様する領域は画面中央下のやや向かって左側部分となります。
今回の試みでは、キャブレター仕様のままECU(フルコン)内の点火マネージメントのみを使用します。すなわち点火システムのみをフルコン化した物。走行中に変化するエンジン負荷に対して、マニホールド圧力やスロットル開度をパラメータとして状況に応じた進角&遅角コントロールを可能にする事で、キャブレター仕様のままリスク無くエンジンの潜在能力を引き出す事が出来る様になるでしょう。
それを実現する為に(キャブ+点火フルコン仕様)最低限必要なセンサーはTPSもしくはVPSと、出来ればヘッド温度センサーがあれば尚良しです。
更に今回はロギング機能をキャブレターセッティングに活かす事が目的の為、更に吸気温度と空燃比センサー、速度センサーも追加します。
今回の被験者は高山の黒豆Z。CR33キャブレター仕様ですので、バキュームセンサーまたはスロットルポジションセンサーが必要です。
これはCR33に追加装備されたTPSです。実は10年以上前に発案試作していた物ですが、当時は取り付けの手間や一般販売後の調整作業に対する難易度から製品化を見送りお蔵入りしていたもの。今回は自社内でのデータ収集用という事で復活してもらいました。
動画にて作動の様子をご覧ください。分解式プーリーを使用している為、装着の際にキャブレター本体への分解や加工を要しません。また仮に実用化するのなら作動ワイヤーは押し引き両側からのドライブになると思います。
そう言えば、何年か前にKEIHINさんより参考出品でFCRボディを使ったスロットルボディが存在しておりましたが、このCRのボディ又はインシュレーター周辺に上手い事インジェクターを打つ事が出来れば、CRIならぬ見た目CRキャブのままインジェクション+フルコン化も可能という事になります。需要は無いと思われますが。笑