Z1系エンジンの76年モデル以前に使用されていた6㎜仕様のエキゾーストスタッドボルトは、以降のモデルに比較すると経年劣化等により折れやすい傾向にあります為、この部分の修理頻度は割と高いです。
さて、今回修理するのは2番シリンダーのしかもフレーム側と言う、車載状態で作業を行うには最も難易度の高い場所です。
何故にかと言えば、フレームの影になっている為に修理場所が見辛い上、通常の長さのドリル刃ではやはりフレームが邪魔してハンドドリルでは振れ易いロングドリルを使わなければならず、更に作業者が右利きの場合はどうしてもドリルを使う姿勢に無理がある為です。
この為、2番気筒のスタッド修理の場合、 ドリルが折れ込みボルトを外れて斜めに食ってしまうリスクを回避するのに フロントフォーク迄を含む前廻りを取り外して作業を行っています。
上手く折れ込みボルトのセンターに下穴を開ける事が出来ました。
この穴を更にガイドにしてヘリサート用の下穴ドリルを使います。
ちなみに、写真のレベルで長年使い込まれて折れてしまったスタッドボルトの場合、経験上エキストラクターではまず抜ける事がありませんので、エンドミル状になっているタイプのドリルで、折れ込みボルトごと揉み落としてしまう事が多いです。
逆につい最近交換されたものが折れた場合に限り上手く抜ける場合がありますので、エキストラクターを使う場合もありますが、どちらを選択するかの選択は経験だよりです。
今回はやはり削り落してヘリサートコイル挿入を選択、新しいスタッドボルトを組み込みました。
さて、この様に折れてしまう頻度が高い6㎜スタッドなのですが、弊社でも以前折れ難い硬い材質で作れないかと検討した事はあります。
ただ、硬度を上げたとしても太さを変えられない以上、大きな負荷がかかればむしろ折れ易くなってしまう可能性が高いです。
しかもSCM等のクロモリ鋼を使用して折れ込んでしまった場合、削って抜くには超鋼ドリル刃が必要となり、それでも硬い素材にはハンドドリルでは滑り易くて修理作業が困難になると考えて無理に硬度や強度を上げるメリットが無いとして、万が一に折れても修理の為のドリル刃が立てられる硬さの純正エキゾーストスタッドボルトを使用する様にしています。
一般的なドリル刃の食いの悪いステンレスやチタン素材のスタッドを私たちが使わないのも同様の理由ですね。