幼少期、仲の良い友達と一緒に大切にしているオモチャ等を何か容器や箱に仕舞った物を、誰にも言わないという約束の下に意味も無く地中に埋めたりした経験無いでしょうか。実際の所は、それ程日も経たない内に掘り起こしてしまうのですが。笑
さて、この仕事を看板掲げてやらせて頂くようになり早25年近くが経過しました。当時、思い切ってBGに広告を掲載した際、USから新規輸入した初期型のZ1を載せ「四半世紀の時を超え・・・」と謳った記憶がございますが、そこから更に四半世紀が過ぎようとし、半世紀すらも見えてきました。
その間数え切れない程のエンジンを開け閉めし、正直なところ今の目で見ればお粗末な仕事も過去には在ったと思いますし、全てに完璧だったとも申しません。ただ今よりも「知らなかった事」はたくさんありました。
そして長い事この仕事をしていると、過去に組んだエンジンを再び開ける機会も増えて参ります。それは距離を重ね再びOHを必要とする物もあれば、更なるチューンを施す為に開け閉めする事もあるわけなのですが、例えば20年前に組んだエンジンを開けたとすると、ちょっと今なら恥ずかしいかな?と思う事だったり、あの時コレを知っていれば・・・と思ったり、又は割と自分達の判断と仕事は正しかった!と思える事もあります。
画像は十数年前に組んだエンジンから、更なる調律作業を施す為、分解清掃中のヘッドから外したバルブです。あるバルブに特殊な表面処理を施した物ですが、付着したカーボンを除去するとキレイな地が顔を出しました。STDよりも荷重の上がったバルブスプリングに約10mmのリフトを持つカムが組まれており、当たり面の凹消耗を憂慮していたのですが、面もフラット且つアタリ幅もOKと、全く持って心配無用な状態で当然再使用です。
遠い昔に組んだエンジンを開けるのは、何となく期待と不安の入り混じる複雑な想いがあるのですが、正に幼少期に地中へ埋めた宝物を数年後に掘り起こす気持ちに近いのかもしれません。
更に数十年先に、何処かで誰かに開けられても、恥ずかしくないエンジン組んでゆきたいと思います。