エンジンOHの為お預かりしていた750FX-1のエンジンです。分解と粗洗浄が完了し、状態把握の為の各部点検や計測を進めているところです。
まず気になるのがEX側全てのカムホルダーボルト穴に挿入されていたヘリコイル。これが全体的に上へと上がって来ており、下穴の状態が心配です。状態によっては修復の難易度が強烈に上がります。
そして、長年空冷ZのエンジンOHに携わる私達でも、あまり見る事の無い段付き摩耗がリフターホールの数カ所に発生しています。画像では分かり難いと思うのですが、赤線で囲った場所に明確な段付きが確認出来ます。
こちらも同様に段付き摩耗が確認出来ます。一か所だけであれば、何か偶発的なトラブルがあったとも思えるのですが、程度の差こそあれ全カ所に何らかの明らかな摩耗痕があります。
相手となるリフターを見ても、やはり上下端の当り幅が広く、リフターとホールの過大なクリアランスによる踊りが発生している様です。これだけ摩耗が進むと異音の発生源になる可能性もありますし、厳密に言えばカムによるバルブの動作も正確性に欠け曖昧になって来るはずです。全体的な寸法変化も摩耗により発生していると思いますが、やはり指の腹や爪先で触れても明確に分かる段差が気になります。
精密リフターホールボーリングとOSリフターで対処出来る寸法だと有難いのですが。更に検証を進めます。
このヘッドはカムラインの修正等も必須メニューとなっており、満身創痍とも言える状態なのですが、オーナーさんの深い愛情に支えられ、妥協なくしっかりと直す方向です。