たまに聞かれるのですが、Z系の様に元々キャブレターで燃料供給している車両をインジェクション化すると、キャブ独特の感覚やスムーズさが無くなるのでは?と言われる事があります。
おそらくは、最近の車両でキャブレターだったモデルがメーカー自身の手でインジェクション化された際に、良く出てしまう違和感のあるフィーリングの事を言われているのではないかと思います。
メーカーが市販車をインジェクション化する理由は性能アップの為ではなく、主に年々厳しくハードルを上げられる環境基準に適合させる為です。当然エンジン自体の仕様も同時に変更されて(排ガス対策の為)いる場合も多い上、走行中の空燃費は完全燃焼を目指してキャブ時代より薄目のセッティングとし、アクセルオフ時には急激に燃料を原料やカットしたり、それに合わせた点火時期に制御していますので、燃費面を含めて効率は良くなっていてもパワーダウンやアクセルに対しての反応に違和感を感じる様になったモデルも多く、それらの先入観があるのかも知れません。
又、4輪と違いオートバイ業界ではインジェクション化はまだまだ普及していませんし、セッティング自体慣れている人も少ない為、使い慣れたキャブレターの方が良いと思われる人も多いでしょうが、つまることろキャブレターもフルコンを搭載するインジェクションも、作りたい空燃費を設定する為のツールです。
ただ、セッティングの自由度に関してはEFIには圧倒的なアドバンテージがあります。
同じエンジン、スロットルボディを使いながら、ゆったりと走って過敏なレスポンスがしない様にセットアップする事も、どんな開け方をしても瞬間的に反応する様にも出来ます。
又、吸入される空気に引っ張られる事でガソリンを供給 するキャブでは構造的に困難な燃調制御を行う事で、パワーやレスポンスを上げながらも燃費を抑える事が出来ます。
この為、必要な場合のみに燃料を増やす様なセッティングが出来ますので、実際弊社のZ1000Jは触媒は未装着であるにも関わらず、アイドリング中での排ガス値はほんの数年前迄の高年式車の基準でもそのまま車検にも通過可能なレベルであり、通常走行中の排ガスもキャブ時代に比較して遥かに低いレベルですが、パワーレスポンスとも大幅に上回っています。
更に味が無くなると言われる部分ですが、フルコンと呼ばれるインジェクションのコントロールユニットは、初期状態では何のマップも入っていない空っぽです。どんな開け方、走行状況、エンジンや吸気の温度や気圧等の諸条件で何の仕事をするか、全て人間が決めて教えてやります。
機械が勝手に反応している様に見えて、あくまで人間が教え込んだ命令を忠実に実行しているわけですので、味付けは自由自在です。
下の写真はちなみに、各走行状態でのエンジン負荷に対しての目標とする空燃費の表の例です。
例えば高速道路や街中をゆっくりと流している場合は理想空燃費14.70に近く、アクセルを開けて吸入する空気が増えた時には最大12.49迄多目に燃料を供給する設定です。
更にアクセルを一気に開けた場合は加速増量が働き、その開度や回転数に応じて設定した通りの量と時間、燃料を増量させる事が出来ます。
これらの数値や設定を行うのは人間ですので、あくまで我々の手を離れているわけではありません。
又、フルコンインジェクションの面白い部分は、キャブレターの場合セッティング変更作業にはそれなりに手間と時間がかかるところが、PCさえ接続すればほぼ一瞬で可能な上、以前であれば妥協するしかない部分もいくらでも追いこんでいけるところです。
例えば、パイロットジェットの交換作業がどの程度手間で時間がかかるか、セッティング経験者であれば想像出来るかと思いますが、これがどんな他気筒なエンジンでも数秒。 その気になればシステムの組み方で走行中にでも変更は可能です。
この為、キャブレターのセッティングの経験者の場合、理解して使い始めると面白くてしょうがないと言う人が多いと申しあげておきます。