エンジンが温まってくるとアイドリングが不安定になり、しまいにはストールしてしまうと言う症状でご相談を頂いておりましたKZ1000A。以前ご自分でヘッドカバーを開けた際に、カム山の位置関係からカムチェーンが伸びていると自己申告があり、カムチェーンのジョイントリンク加工と各部の点検をご依頼頂きました。
温まると不調になりストールしてしまうと言う症状からすると、バルブクリアランス不良(詰まり過ぎ)や燃調不良(スロー系統)が思いつきます。カムチェーンの伸びはエンジン温度にはあまり影響される事は少なく、徐々にカムチェーンが伸びる事により少しづつバルタイが遅れて行きますので、症状として自覚する事はあまりないかもしれません。
これは車体右側のエキゾースト側のカムスプロケットを見た状態です。ヘッド上面とEXカムスプロケットの基準ピンの位置関係をみて簡易判断が出来ます。この状態は少々伸びています。
カムを外し上からアイドラー類を点検します。これと言って以上は見受けられなかったので、カムチェーンを繋ぎ変えます。
まず、既存のカムチェーンのピンを抜きチェーンをカットします。ピンをエンジン内に落とさないように注意です。
カットしたチェーンの端に新しいカムチェーンを付属の銅線で繋ぎます。
既存のチェーンの端を引き、新しいチェーンを引き回します。
後は付属の説明書に従い、弊社販売の専用カシメ工具にてカシメます。
完成です。
カムを組み付けます。ノーマルカムでしたら、1.4上死点の時カムノーズセンターが若干ヘッドカバー面より下に来ます。そして作業前に確認した、EXカムスプロケットの基準ピンはと言いますと
ピンが半分程ヘッドカバー面より潜ります。これが正常です。
交換前はピンが完全に見えています。目安としてはピンが完全に出てしまっているようなら交換してもいい時期と言う感じでしょうか。
そして一番怪しかったバルブクリアランスを測定。8箇所中6箇所がメーカー基準の0.05~0.10を下回っていました。シックネスゲージの最薄0.03が入らない程クリアランスが詰まっています。こうなるとエンジン各部が温まりクリアランスが熱膨張により無くなり、さらには部品同士が接触します。バルブクリアランスはバルブが閉まっている時のカムとのクリアランスなので、詰まり過ぎると膨張した分バルブが押され閉まりきらなくなって圧縮不良となります。こうならない為のバルブクリアランスなんですよね。一通りの作業が完了しポイントギャップも調整。試乗しましたが燃調はそこまで悪い感じは無く、不調&ストールの症状も出ませんので、原因はバルブクリアランスだったと思われます。
ちなみにバルブクリアランスはエンジンの構造上、走行距離に応じて詰まる方向になりますので、定期的な調整が必要になります。タペットクリアランスとも言いますね。
その他、試乗の際に気付いた事をオーナー様に方向。自分で出きる所は楽しみながら自分でやるとの事なので、楽しみながら頑張って下さいね!
ありがとうございました!!