こちらの車両は、Z系のインジェクション(EFI)化に興味を持たれたオーナーが、車両持ち込みで作業依頼をされたものです。
元がキャブ車の空冷ZをEFI化する場合、スロットルボディやフルコンECUはもちろんですが、燃料ポンプやプレッシャーレギュレーターにフューエルフィルターとそれらを接続する配管、ECUや各種のセンサー等のデバイスにそれらを稼働させる為のリレーヒューズボックスやハーネスを用意して設置する必要があります。
但し、元々無いものを用意するものですからそれなりに手間がかかります。
各種の必要部品を揃えるコストももちろんですが、上記の作業を弊社に限らず丸投げでプロに依頼した場合ワンオフの塊となってしまう場合があり、どうしても時間がかかる為工賃は大きくなりがちです。
そこで今回のオーナー様は、オートバイの整備や一部の加工、カスタマイズ作業にも通じた方でありました為、各種のデバイスは当社の方で予め準備して、それら部品のマウント位置設定や固定に関しては機能と使用法や注意点を説明した上でご自身の手でそれらの作業を行った状態で車両を持ち込んでいただきました。
当社では、それら各種のデバイス間の燃料配管の接続と、予め製作しておいたEFI用ハーネスを長さ調整しながら組み付け作業を行っています。
これにしてもそれなりに時間はかかるものの、各種部品のレイアウトやマウント方式を考慮したりする手間は無い分ずっと進行は早くなります。
この後、全ての設置が終わったらフルコンECUの初期設定を行い、始動とダイナモ上での走行用マップを製作します。
更に今回の車両はオーナーご自身にも走行を行っていただきながらログデータをベースにマップを完成させていく事になります。
こういった作業形態でのEFI化もご相談に乗っておりますので、ご興味がありましたら個人オーナー、プロショップ様を問わず担当者にお問い合わせ下さい。
さて、先日の筑波サーキットで行われた、各種の空冷Z系が出場するレースとしては最も有名なテイストオブツクバでのトップカテゴリークラスにおいて、市販フルコンにてインジェクション化されたZエンジンをオリジナルフレームに搭載したACサンクチュアリ―製のマシンが、遥かにパワー面で有利な車両を向こうに回しながらクラス優勝、総合で2位を果たしました。
http://www.ac-sanctuary.co.jp/blogs/sanctuary/2019/11/post_1433.html
これはもちろんインジェクションであったから勝てたと言うわけではありません。
同じレースを走っていた車両の中には、Z系より遥かに新しくてメーカー製のEFIシステムを装備したものもあったのですから、むしろそこまでフルコンマップはもちろん車体のセッティングを詰めたメカニックの努力と、それを乗りこなしたライダーあってのものであると思います。
それでも既に40数年前、半世紀近くも前に基本設計が行われた空冷Z系のエンジンがそこまでのパフォーマンスを引き出せる、EFI化の可能性を見せてくれた事は素晴らしい事であると思います。
今後は、フルコンによるEFI化が”使えるもの”として、レース,ストリート問わずZを生かし楽しむ方法の一つとして普及すると良いなと考えています。