インジェクションの加速増量について、FCRキャブレターやTMRキャブレター等に装備されている加速ポンプの様なものでしょうかと言う質問をいただきました。
スロットルの急開時にスムーズに回転を上げながらパワーを出す為には、同じ開度で巡航するよりも多くのガソリンが必要となりますので、それを増量する為に追加投入してやる機構が加速ポンプです。
これが装備されているおかげで、FCRやTMRキャブレターは巡航走行時に必要以上に濃くしなくとも済む為、同じレスポンスを望んだ場合でも燃費は良好になる傾向となります。
インジェクションにおいての加速増量も目的としては同じものと言えます。
ただ、インジェクションの場合、構造的にはほぼ一つのインジェクターでガソリンを供給するシンプルな構造で、加速ポンプの様に別途にガソリンを供給する為の別ポートがあるわけではありません。必要時にインジェクターからの噴射量を増やす様に制御する事でその機能を持たせています。
ちなみにこれはLINK ECUの設定画面。
単位時間中に1パーセント以上スロットル開度が増えると加速増量が働きます。
逆にゆっくりじわりと開いた場合には増量は行われません。
例えばFCRキャブレターの場合はスロットル開度の早さには関係なく、開いた際にはポンプからある程度のガスが出る構造になっていますね。(一部のモデルを除く)
又、加速ポンプの様に噴射の為の動力をライダーのスロットルワークには頼っていません為、プログラム上でスロットルを一気に開いた場合にどれだけの量をどれだけの時間増量するか、さらにどれだけの時間をかけて終わらせるかをエンジン回転数毎別にきめ細やかに設定可能です。
実際に加速増量が働いているところ
黄色で示した部分でスロットルを急開した瞬間に、通常マップで設定した量に対して噴射量を増量補正し、空燃費が大きく薄い方向に振れる現象を抑えている事がわかります。
キャブレターの加速ポンプに比較して、機械的な噴射遅延が非常に少ない事も特徴です。