ある程度のマップを作って走行出来る様になったら、シャーシダイナモ上での全開域セッティング迄移行します。
同一エンジンでCRキャブレター時に比較すると、約15PSの向上となりました。
これはフルコンインジェクション化により、 口径29mmのキャブレターを38mmのスロットルボディへと、大口径のものが実用出来る様になったという効果が大です。
もちろんピストン式のスロットルバルブを持つ強制開閉キャブレターとバタフライ式のスロットルボディの口径の違いを単純に同列に比較する事は出来ませんが、キャブレターにしても吸入容量をそれなりの大口径のものにすれば、スロットル全開時のダイナモ上測定出力のみに限って言えば同レベルの数値を出す事は可能であろうと思われます。
但し、オートバイは最高出力を発揮する全開域のみで走行するものではありません。
特にストリート仕様であれば、アイドリングからクラッチを繋ぎ走り出す際の極微開度であったり、スロットル開度5パーセント以下で極低負荷での走行を行っている割合は非常に高く、リッタークラスの車両であれば高速道路の巡航走行は開度10パーセント以下でもほぼ足りてしまう場合もある位です。
そこから加速するにしても、常にアクセルを全開迄開く様な乗り方しかしない人は皆無でしょう。
又、燃料供給を空気の流れや負圧に依存するキャブレターの場合、最高出力を目指して大口径化すると、どうしても全開時以下の常用域での扱い易さが低下する傾向にあります。
対して、燃料供給をECUでコントロールした場合、走行状態に応じて気流や圧力に依存せずに能動的に行う事が出来ます。
この点がインジェクション化によるアドバンテージとなりますね。
さて、下の図は高速道路を走行してきた際のログデータから、アクセル開度とエンジン負荷を視覚化したものです。
それなりに加速すべきところではアクセルを開けてはいますが、走行状況の殆どが開度20パーセント以下の領域に収まっている事がわかります。
これが一般道であれば更にメインの開度領域は下がります。
さて、弊社ではキャブレター,インジェクション問わず、セッティングの際にはシャーシダイナモを用います。
エンジン性能を測定する為の全開域はもちろんですが、走行条件をシミュレートする為にリターダーによる負荷をかけて、中開度域も測定しながら調整します。
しかし、車両個体によっても異なる路面からの抵抗や速度によっても増大する風圧による抵抗の様に全ての負荷や走行条件をダイナモ上で再現できるわけではありませんので、最も使う領域を含めて実走行により本物の負荷をかけた走行条件から車両ごとに調整を行う様にしています。