OHの為単体でお持込み頂いたZ2エンジンの分解に着手。
シリンダー壁とリングが腐食により固着していた為、分離に少々時間が掛かりました。左右のカバー類を外した後はケース上下を締結するボルトを緩め抜き取ってゆきます。一本も折れずに抜ければlucky で折れてそれほど動じないのは、永い事この手のエンジンばかりに触れてきている「慣れ」というものでしょうか。
センターにZ2の印字。薄くなっていますが手前側には48/8と言う印字があり辛うじて読めます。
クランクメインベアリングを押さえるボルトが二本ほど折れ込みましたが、他は無事抜き取り完了です。因みにこのケースは以前にも開けられています。上下ケースの合わせに使用するシール剤で分かります。見た所はこれといった異常は無さそうです。
クランク、トランスミッションやクラハブのダンパー等も大きな異常はなさそうですが、洗浄後に各部の計測作業を行い確認を重ねてゆきます。
また上下クランクケースを締結するボルト類(社内では縦ボルトと呼んでいます)は長年の使用により疲労が蓄積していると思われ、出来れば再利用は避けたい所ではあるのですが、「フルノーマルエンジン仕様で外観のヤレもそのままに再現」というリクエストにお応えしボルト類を再利用した際の事、規定トルクで締めた数分後にバチン!ともパーン!とも聞こえる破裂音がして、見るとボルトが途中から破断してロケットの様に飛んで行ったという事がありました。これが走行中でなかっただけ良かったのですが、金属疲労が限界まで達していたのだと思いますが、辛うじて原型を留めていたボルトも解放され再びトルクを掛けられた時点でその限界に達したのだと思います。
ケース締結用のボルトはは、JIS規格強度8.8以上という条件を満たしている必要があり、寸法上で同寸であっても一般的な生鉄ボルトでは伸びたり破断したりする恐れがありますので注意が必要です。
取り外した各パーツを粗洗い専用の洗浄代へ。ここでザックリと長年の使用で蓄積された汚れを落とし、後に本洗い用の洗浄代で洗った後に各部の検証に入ります。
最初にシリンダーブロックを本洗い用の洗浄台に移動して洗い始めますが、アッサリとライナーが抜けてしまいました。ほぼ50年近くも頑張ったのですから、この位は勘弁してあげましょう。
近日中にオーナーさんのリクエストを踏まえながらOHの方向性についてお話です。
旧い空冷Zのエンジンが新車以上の状態で再び産声を上げる瞬間は、何基組んでも未だに心躍るものです。