純正クラッチに限って言えば、1972年のZ1から1980年のZ1000Mk2迄、クラッチのフリクションプレート,クラッチプレートそしてクラッチスプリングは品番が同じです。
最初は900㏄のエンジンは1000㏄となってパワーもトルクも向上しましたが、Z1のそれは元々容量があった事がわかります。
国内仕様のZ2が販売になった際も同じくフリクションプレート,クラッチプレートも変更はありませんでしたから、むしろ排気量ダウンされたエンジンにとってはオーバーキャパシティーだったのでしょう。
その為、ストップアンドゴーが多い日本ではより扱いやすくと考えられたのか、クラッチスプリングはより柔らかいものに変更されました。
参考までに、これは割と状態の良いZ2のクラッチ周りです。
この赤いクラッチスプリングをエンジンに組み込んだ状態と同じ長さ迄圧縮した場合のセット荷重の5本の平均値は16㎏強
そこからクラッチレバーを握り込んだとして、2.5㎜圧縮した場合の平均加重は約23kg
例えば同様にある程度使用したZ1~Z1000Mk2のクラッチスプリングを同様の高さに圧縮した場合の平均セット加重は約23㎏ Z2の1.3~1.4倍です
同じく2.5㎜圧縮した場合の5本の平均加重は約30㎏でした。 Z1の場合、クラッチを握り込んでホールドしている際の力はZ2の1.3倍程度必要になるという事になります。
この様にフリクションプレートとクラッチプレートの容量が大きい分、Z2はスプリングのレートやセット加重を下げて扱い易さを向上させていたわけですね。
余談になりますが、ドラッグレース的な走り方を繰り返したりしなければ、通常走行で使用されているクラッチはフリクションプレートがマニュアル上の摩耗厚さ限界になっているような事はブレーキパッドと違ってあまりありません。
それでもある程度時間の経ったクラッチが滑る場合があるのは、長期に渡って圧縮されたクラッチスプリングは自由長が縮んでくる分、同じセット高さに圧縮してもクラッチ面にかかっている荷重が低下する為です。
滑らせ過ぎてライニングが研磨された様になったり焼けが来ていると無理ですが、フリクションプレートの表面やクラッチプレートに異常が無く、滑りの初期であればスプリングを新品に交換するのみで解決する場合も多いです。