クラッチハウジングの構造について質問を受けたので。
クラッチハウジングは、その内部に回転方向のショックを吸収する為のダンパースプリングを持ちます。
カバーを取り外すとこんな感じです。
レートの低いスプリングと高いスプリングが互い違いに入っています。
このスプリングはクラッチハウジング側とギアの間に組まれているのですが、回転方向に力が加わった際に、レートの低いスプリングから縮み、更に大きなショックや駆動力がかかった際に高レートのスプリングが圧縮されます。
これによりクランクシャフトとクラッチハウジング間で大きな力が打撃的にかかるのを防止しています。
イメージとしてはこんな感じです。
ハウジング側とギア側の穴がずれるようになるのを、スプリングでその動きを吸収しています。
ちなみに、このダンパースプリングですが、アクセルのオンオフ、クラッチを繋いだ際、そのすべての回数だけ圧縮と伸びを繰り返しますのでバルブスプリングにも等しい程の耐久性が要求されますが、長年使っていると全長も縮んでガタが生じたり、限度を超えると高レート側のスプリングが折れたりしてショックを吸収できなくなりフィーリングが悪化します。
通常、純正のクラッチハウジングは非分解式で、スプリングが消耗した場合はアハウジングアッシでの交換となります。
但しZ1系のハウジングはパーツとしては廃盤欠品ですので、分解してリビルトを行うか、弊社ではまだ部品の入手可能なJ系ハウジングを流用してコンバートする様にしています。
又、ドラッグレース等の急激なクラッチ操作での高負荷に対応する為に、これらのスプリングを更に高レートのものに交換する等のチューニング方法があります。ただ、ストリートで使用する車両のクラッチハウジングで低レート側のプライマリースプリングを硬くしてしまうと、クラッチハウジングギアとクランク側ギアのギア遊びとなるバックラッシュのショックを吸収出来なくなる為アクセルのオンオフ時や特定の回転数で激しい打撃共振音の発生原因になります。
ちなみに、乗用車のマニュアルミッション用クラッチは、オートバイの様なハウジングではなくクラッチプレートとフライホイールを面接触させる構造のものが通常ですが、そのクラッチにもダンパースプリングが入っているのが普通です。
この場合はクラッチと一体の部品ですので、これを交換する事でスプリングも新品になります。