生産されて半世紀近くにもなろうとする物も多いZ系エンジン。
オーバーホールや修理の為にクランクケースを分解しようとすれば、抜こうとしたボルトがねじ山部分で折れてしまう事も珍しくありません。
今回折れたのは、ケース合わせボルトの中でも一本しか使われていない長さのキックシャフト部分のところ。
この様に分解時に折れてしまうのは経験上長いボルトの方が多いです。
アルミで出来ているクランクケースの膨張と収縮で常に引っ張り続けられる場合、長い部分程負担が多いせいもあるかと思います。
シリンダーブロック合わせ面の面研やスリーブ穴拡大等、内燃機加工を含むエンジンオーバーホール時であれば、折損ねじの抜き取り等も一緒に内燃機加工にお任せする事もありますが、今回はケースのみの開閉整備で折れたものですので、この場で修理してみます。
折れ込んだボルトセンター中心に、精密ドリルで穴を開け、一応エキストラクターで抜き取りを試みます。これで抜ければラッキーですが、緩める最中に折れたボルトは、ネジ山が母材側に張り付いてしまっていますので9割以上の確率で緩む事はありません。特に6mm程度の太さに使えるエキストラクターは細い為、無理をして折ってしまうとえらく手間な事になりますので、早々に見切りをつけます。
又、上手く抜けたとしても一度張りついたケース側の雌ネジは素材として傷んでしまっている可能性も高いので、今回は折れ込みボルトごと削り取ってヘリサートコイルを挿入し、予防措置的に修理します。
ちなみに、当方が折れ込みボルトを削り取りながらヘリサート用の下穴加工を行う場合は、この様に先端形状がガイドドリルとエンドミルの複合タイプになっているタイプのドリル歯を使う場合が多いです。
ヘリサート加工完了。
加工時にねじ山入口は極々僅かに盛り上がりますので、オイルストーンで最小限にならしています。これもメーカーが製造時の加工痕が消える程当ててはいけません。
ボルトが垂直に通って、ケース側の貫通穴を擦らずにスムーズに回せることを確認して終了です。
ちなみに、ボルト長が長くなる程、加工機を使わずに正確にセンターに穴を開けたり垂直に加工するのはこれで結構面倒なので、一般ユーザーさんが分解中に折れてしまった場合は加工のプロに任せた方がベターです。