長年使用したシリンダーヘッドの雌ねじ山が崩れてしまいトルクがかからなくなってしまうのは、既に良く知られている事ですが、修理方法としてはヘリサート加工と呼ばれる手法で、1サイズ大きく作り直したねじ穴にコイルをインサートします。
長目のコイルを使用して適切に作業が行われていれば、それで相当期間は持つのですが、それでも度重なる分解や、インナーシムの場合は調整の度にカムを脱着する必要がありますので、そのヘリサートコイルすらも引き抜けてしまって来る場合があります。
そこまで痛んでしまった場合は、シリンダーヘッドを取り外してバルブ周りを全分解の上でフライス盤で大き目にねじ穴を作り、その中に硬度の高めのアルミで作ったボルトをねじ込んでから更に中心に本来のボルトの為の雌ねじを切ってやると言う手法で修理します。
ただ、必ずしもヘッドを外さずに次回のオーバーホール迄の本整備迄は固定できる様にと言う方法が無いわけではありません。
これは、知人の業者さんが製作したスリーブ。
外周部分に9mmのP1.0 という、通常ではあまり見ない規格で作られています。
ヘリサートコイルが引き抜けた部分が、運良くドエルピン部では無かったので7.9mmの下穴ドリルを通してから適切な深度迄ねじ山を切り、緩み止めを塗布してからねじ込みます。
この際、あえて #3の仕上げタップは使用せず #2迄のタップで、ヘッド側下穴の底迄切らない様にして途中でスリーブの回転がきつくなる程度にしています。
スリーブが抜けない程度に、でもきつくなり過ぎない程度に入れるのがコツになります。
これはヘリサートコイルの様に、挿入されたコイルが常にスプリングの様に外に向かってテンションをかけるわけでは無い為です。
次回にヘッドを外す様な整備を行う際には除去して本修理を行うにしても、相当な強度となりますので、十分に機能してくれる筈です。