EFI(電子式フューエルインジェクション)は、その名の通り燃料としてのガソリンをインジェクターから噴射する事で供給します。
空気の流れや圧力差でガソリンを供給するキャブレターとは、ここが最大の違いなのですが、更に燃料供給のタイミングを自由に設定出来たりします。
例えばキャブレターだと、特にアイドリングや低負荷運転中にガソリンがパイロットポートから噴出するのはインテークバルブが開きながらピストンが下がってマニホールド内の圧が下がった際にとなるのですが、この場合ガソリンは圧力差によってポートから湧く様に出てその多くはポート内壁面を流れ、多くのガソリンは霧化して空気と混じりきる前に燃焼室の中に液体のまま入ります。この為にどうしても燃焼効率に劣りますのと、場合によっては燃え切らないガソリンがそのままエキゾーストから排出されます。
これがインジェクションの場合、マニホールド内の圧力や空気の流れとは無関係にガソリンを供給する事が出来ます。インテークバルブが閉じている間にガソリンをポート内にシャワー状の噴射を行い、ポート内やインテークバルブの熱によって霧化した後にバルブが開き燃焼室に混合気として流れ込みますので、ロスが少なくなります。(車両によっては閉じたインテークバルブの傘に直接当てる設計になっています)
インジェクション化すると、特に常用域で燃費の向上と排ガスのクリーンさで有利になるのはこの為なのですが、それには噴射タイミングを各気筒で適切な位置で行える様にする必要があります。
例えば、4サイクルエンジンでは、1サイクルがクランク角度で180度。噴射は各気筒720度(クランクが2回転)に一回という事になり、この噴射方式はシーケンシャル噴射と呼ばれます。

ちなみに、下のオシロスコープ波形動画がシーケンシャル噴射波形です。
黄色がクランクのピックアップトリガで22波分がクランク1回転、水色の大きな波は1番気筒のマニホールド圧力で、インテークバルブが開くと圧力が一気に下がり、閉じた後に徐々に圧力は上がります。これが一波720度クランク2回転です。
ピンクの色で示されているのは1番気筒のインジェクターコントロール波形で、波形が下がっている時に燃料は噴射していますが、このエンジンでは排気上死点前約270度、インテークバルブが開くかなり以前で噴射終了する様にコントロールされています。
緑で示されるのは運転サイクルが360度違う4番気筒のインジェクターコントロールで、丁度1回転分ずらしてあるのがわかります。
又、シーケンシャル噴射以外の噴射方式としては各気筒同時に噴射を行うシングルポイントグループ噴射があります。
この場合は各回転毎に例えば同じエンジンで1番と4番を同時に噴射を行います。
下の写真がその場合の波形ですが、常にピンクと緑が重なって、エンジン回転毎に噴射が行われています。


この場合、インジェクターの実噴射時間はシーケンシャルの場合の半分ずつ。
2回に1回はインテークバルブが開いている間に噴射している事になります。
ちなみに、現行の市販車両でインジェクション化されているものは全てシーケンシャル噴射方式が採用されています。
性能や扱いやすさが向上しているにも関わらず省燃費で排ガスが綺麗になっているのはこの為でもあります。
ただ、シーケンシャル噴射の効果が大きいのはアイドリングから低中速の回転あたり噴射時間の短い低中負荷運転中で、高回転になるとバルブが開いている間にもインジェクターの開弁時間が重なる様になる為、シングルポイントグループ噴射との差は小さくなります。