インジェクションと言えば、始動のスムーズさと確実性、落ち着いたアイドリングというイメージがあると思いますが、それらはシステムを導入さえすれば容易に実現出来るというわけでは無く、そうなる様に細やかに様々な諸条件を想定してセットアップを行う事で可能になっています。
通常、特に冷間時にキャブレターを使って始動する際にはチョークを使ってクランキング時にガスを余計に入れてやる事で空燃比を濃くし、初爆に成功してエンジンが回り始めたらチョークを戻してスロットルを開き、燃焼が安定してシリンダーヘッドが暖まる迄少し回転を上げてやります。
インジェクションの場合はこれらの動作を温度や回転数、スロットル開度を含んた条件を読み取って、ECUが自動的に対応して動作する様に教えてやる事になります。
これらの作業は通常の走行用マップの製作用マップとはまた違い、より完成度を高くしようとすればかなりの時間がかかります。
何故ならば、完全に冷え切った状態からの始動と暖機中の変化やテストは1日に何度も出来るものでは無いからです。
ただ、難しく考える事は無く、時間はかかりますが方向性と言うものは決まっていますので、大まかに始動さえできる様になれば後はそれを詰めていくだけです。
調子が悪くなったら前の状態に一瞬で戻せるのもフルコンインジェクションの良いところでもありますので。
例えばLink ECUの最新型G4xシリーズだと、
キーをオンにした際に一瞬燃料を噴射してポート内にガスを巻き、
スターターボタンを押した瞬間に、行程とは無関係に又一瞬噴射。
更にセルモーターが回っている最中は基本マップに対して噴射量を増量。
エンジンがかかった後もしばらく増量します。
これらの動作を、エンジン温度やスロットル開度、始動後の各条件をチェックしながら2次元もしくは3次元のマップを用いながら空燃比や点火時期で操作します。
難しそうに見えますが、キャブレターセッティングの経験がある様な人は大変楽しいとはまる方も多い様です。
以下の動画は、既に暖機後の始動時のものですが、これもエンジン温度を条件として、クランキング時の増量や始動後の補正時間、点火時期等をコントロールしています。