純正のエンジンのオリジナル寸法は間違いないというイメージはありますが、実は以外にも公差や個体差がある部分はあります。
例えば、Z系のシリンダーブロックやシリンダーヘッドの高さ一つとっても、新車当時から一度も開けられた事の無いフルオリジナルのものや当時もののデッドストックを含め、数多くの測定を行いましたが、プラスマイナス0.1mm程度の差は普通にあります。
マイナス方向であれば、オリジナルに見えて実は面研されていたという事もあり得ないとは言えませんが、多数のプラス方向に厚いものがあるという事は事実です。
又、シリンダーブロックに開いている穴の位置、これも完全な精度では無く、シリンダースタッドの穴位置や大きさがコンマ数mm違うのは普通で、更にピストンの入るシリンダーボア位置も車体の前後左右方向にコンマ台で各気筒とも位置のばらつきがあるものも多いです。
更にシリンダーヘッドに成型されている燃焼室の位置に関しても同じです。
Z1系からJ系初期のヘッドでは燃焼室内は全面加工。J系後期やGPz1100エンジン等一部鋳造肌がそのまま残されてているヘッドもありますが、ピストン外周方向のスキッシュエリアは必ず加工されています。
この燃焼室加工の中心点の位置がやはりコンマ数mm単位でずれているものも珍しくはありません。
さて、これはオーバーホール依頼で入庫して分解したZ1100Rのエンジンから取り出したピストンです。
75mmの社外ピストンに変更され、若干の面研により圧縮も高められたチューニングエンジンでした。
GPz1100のシリンダーヘッドは、このモックアップの様に多球形状の複合形状の燃焼室なのですが、外周部のスキッシュエリアはピストンの頭部形状のスロープ角度と同じに切削加工されています。
このピストンヘッドを再度見ると片側のみにカーボンの付着が無く、運転状態によっては軽く接触していた様です。
おそらくはほんの僅かに当たるか当たらないかと言うレベルだったので、エンジンブロー等の大きな問題には運良く至らなかったのでしょうが、実際にヘッドの方を確認してみると、このピストンが使われているエンジンの燃焼室は僅かに横方向にずれていました。
この様にZ系エンジンに限って言えば、様々な公差と言うか個体差がありますので、STDエンジンのオーバーホールであれば問題は無くとも、コンマ台を詰める様なエンジンチューニングを行う場合は、実機での仮組みによって実寸法を確認しながらの作業が必要になります。