画像上は同じZでも四輪のS30用の物です。
未だ仕上げ途中のヘッドですが、このL型エンジンのチューンに関しては大変奥深くまた歴史のあるもので、ただのシングルカムに古臭いターンフローとする基本設計なのに、気合いを入れイジってやればサラっと100PS/L~120PS/L前後を叩き出します。L28ベースで3L~3.2Lへと排気量を上げたすると、300~370PS前後をNAのまま出力するという面白いエンジンで、未だにこのL型チューンに魅了される人が後を絶ちません。
さて、そんなL型エンジンチューンの要はやはりヘッド。先人達が試行錯誤を繰り返しながら今日に至りますが、圧縮比を稼ぐ為燃焼室は小さくハート型に、ポートとバルブは限りなく大きくというセオリー。
ただ、このヘッドを作るのには少々リスクがありまして、まず燃焼室をコンパクトにまとめる為、熱歪と戦いながらアルゴン溶接で肉盛りした後に燃焼室を整形という荒業を必要とし、更に最も恐いのはポート拡大を極限まで求めた事でウォータージャケットとポート内壁が貫通し使い物にならなくなるというリスク。
今回、ポート内とウォータージャケット間がポート加工によって貫通してしまったヘッドにまるで人間ドックの様なCTスキャンを掛ける機会を頂きまして、その断層画像が大変興味深くここに数点UPさせて頂きたいと思います。
丸く映っているのがINポートで縦長の四角い物がEXポートです。青丸でマーキングしたインテーク部分に歪な断層となっているのは、貫通した水穴を埋める為に溶接盛りされている痕です。しかし赤丸で囲った部分を見て貰えば分かる様に、貫通はしていないものの薄皮一枚でギリギリ貫通せずに済んでいるといった状況です。少し尖った物で突けば簡単に貫通しそうな肉厚です。
更に燃焼室側へと断層画像を燃焼室側に進めてゆくと、やはり同じ様に薄皮一枚な部位が多数確認できます。ポートを取り囲む黒い部分は冷却水が流れるジャケットです。
そしてこちらはポートを真横からみた断層画像。やはり薄皮一枚いつ水穴が開いてもおかしくない肉厚となっているのが確認出来ます。仮に貫通してなくとも、熱収縮や振動そして圧力などで走行中に穴が・・・というトラブルも大いにあり得るわけです。
空冷Zのヘッドでも、何度かに渡り切断してはポート形状を確認し、オイルギャラリーとの距離等を把握した上でポート拡大などを行ってきましたが、この様にCTを使えればより安全に確実な加工が可能となりますね。
CTスキャンによる断層画像、大変興味深く勉強になりました。ご担当して下さったF様、本当に有難うございました。