これは使用済みのシリンダーベースガスケットです。
グラファイト層に当たり面が残る為、シリンダーブロックとクランクケースのシールされている部分とされていない部分がはっきりわかります。
さて、問題はシリンダーブロックに開いているスタッドボルトホールと、シリンダースリーブ近くにブロック面から開けられた風通し冷却用の加工ホールの位置です。
ガスケット自体は左右端のドエルピンで位置決めされている事と、クランクケース側に立てられたシリンダースタッドの位置はかなり正確になっているのですが、それにも関わらずシリンダーブロック側に開けられた穴位置に関しては実はかなりの個体差と言うか誤差があります。
これは、ガスケットに残った穴の押し跡位置を見るとわかります。
シリンダースリーブ方向にかなりのずれがありますね。
上の写真で分かる通り、Zの場合カムチェーントンネル横の一番内側の4本のスタッドボルトの穴位置は、クランクケース側のスリーブが入る穴位置に非常に近く、シリンダースリーブを大きなものに交換するのに、ケース側の穴を大きくしていくとこの部分のガスケットの有効咥え幅が2㎜以下になってしまう場合があります。
その上でもブロック側の穴位置の公差が大きかったりしてスリーブ側に寄ってしまうとガスケットの有効咥え幅がほぼ無くなってしまい、シリンダーベースからのオイル漏れが発生する可能性は非常に高くなります。
従って、スリーブ交換時のケース側穴の拡大は、可能な限り最小限にして頂くようお願いしています。
何より大きく切り過ぎてガスケットが効かなくなってしまった場合、元に戻せない為にクランクケースが使用不可能になってしまう場合がありますので。
ちなみに、このガスケットが使用されていたクランクケースも、かなりの穴径拡大が行われていた様で、ブロック側の風抜き加工穴位置を考えると、ガスケットの有効咥え幅は線の様に細い事がわかります。ガスケット側のスリーブ穴より大きくなっていました為です。