オートバイはキャブレターインジェクションと問わず、各気筒が独立したスロットル構造になっているのが普通ですが、開度が少ないアイドリングや低回転時の各気筒が発揮する出力を揃えて足並みを揃えさせるのに各気筒間が吸入するエアを同じにしてやる同調作業を行います。
ちなみに、キャブレターの場合は各気筒の開き具合でインマニ圧が変わるとそれによって吸い込まれるアイドルの為のガソリン量も上下しますので、スロットル同調がずれると特にアイドリング中に各気筒の燃焼室に入っていく燃料の量は均一ではありません。
ただ、キャブレターでアイドル付近のセッティングがしっかり出来ている場合、全閉付近の微開度域では開度の大小の差では大きく空燃比が変化しないというメリットもあります。
全閉付近のパイロット系を重視して設計されていた負圧キャブレターをきちんとセッティングすると、特にアイドリングが常に低く安定していて使い易いのは、ここに理由があります。
それに対してインジェクションの場合、スロットル全閉時に各気筒の同調が取れていなくとも、燃料マップ上の基本設定では全気筒に対して決まった量を同じ量ずつガスを噴射します。
以下のマップで青く囲まれているところがアイドリングの噴射量ですが、これはZの場合1番から4番迄同じ量噴射です。
インジェクションはインマニ圧や空気の流れに依存せず、能動的に燃料を供給できるメリットはあるのですが、各気筒間の同調が取れていない場合、特にアイドリング中ではバタフライの開き度が少ない分吸入空気の量のズレの大きさ割合は大きくなり気筒毎の空燃比のばらつきは非常に大きくなってしまいます。
そうなるとインジェクション化にも関わらず 気筒間の燃焼状態もまちまちになってしまう為に意外なほどラフなアイドリングになります為、インジェクションであってもキャブ同様にしっかり同調が必須で、吸入する空気量を揃える事で燃焼状態のばらつきも抑える事が出来ます。
ちなみに、写真ではアイドリング中の各気筒間の圧力をより正確に揃える為、負圧メーターは1つにして、各気筒への接続をバルブの開閉で選択する様にしています。
更にインジェクション化に使うECUのソフトウェア仕様によっては、各気筒のインジェクターの個体差を調整する為のトリム機能が備わっているものがあります。サンプルのLINK G4Xも、”気筒別燃料補正”の項目でこの機能をアクティブ化出来ます。
この機能を使ってアイドル音聴きながら各気筒の噴射トリムを全閉に近いあたりのみでも調整してやると、更に空燃比差を均一に揃える事が出来ます。
一見凄そうにも見えますが、やっている事はキャブレターのスロットル同調後にパイロットスクリューで各気筒間のアイドルガス量を微調整しているのと同じ事ですね。