こちらは弊社でデリバリーしておりますCGベースガスケットです。
CG=カーボングラファイトからのネーミングですが、この素材は滑り特性と密着性、又柔軟性に非常に優れる為、シリンダーベースガスケットに要求される耐オイルリーク特性に優れます。
又、耐熱性に優れ、耐熱ファイバー系のガスケットの様に硬化しない為に長年使用しても素材硬度の変化が殆ど無く、又旧来のガスケットの様にアルミ素材のガスケット面を腐食させる事もありません。
既に販売を開始して10年以上になりますが、初期にこれを使用して組んだエンジンでもオイル漏れ無く、分解してみても綺麗な面のままで、残ったガスケットは爪先やプラスチック製のスクレーパーでも簡単に除去できる程です。
これについては以前に記事にした事がありました。
ただ、カーボングラファイトはそれそのものは結合性が低く、そのままシートにすると崩れてしまいます為、ガスケットとして使用するには芯材が必要になります。
弊社で使用しているものは芯材がグラスファイバーのものとスチールの2種類です(表層部分の表裏は見た目ほぼ変わりません)。
この内グラスファイバータイプのものは、空冷エンジンの様にブロック毎に膨張収縮方向が複雑なエンジンであっても、その柔軟性を生かして合わせ面の膨張ずれにも追従しながらシール性を長期に渡って保ちますので、1990年代以降のメーカー車両の特に空冷エンジンのシリンダーベースガスケットにも広く使われて来ました。
ファイバーコアの場合、アップにすると表面に芯材のファイバーの編み模様がうっすらと見えます。
ちなみに、Z1000J系エンジンは90年代途中より最終型の2005年(Z1000P)迄、同じく空冷4気筒のザッパー系においてはゼファー750の前期型は純正のベースガスケット素材がこのファイバーコアカーボングラファイトでした。
又、空冷水冷問わず、単気筒エンジンの場合はつい近年迄のモデルでもこの素材を使用しているものが見られます。。
10数年以上も前にZ系の各種ガスケットを製作しようと思い立ち、仕様を決めながらデザインに入った際に、まずシリンダーベースガスケットに求めたのは。まず組み立てたエンジンからオイルを漏らさない事でした。
オイルが漏れるのは旧車だからと言う言い訳にはしたくありませんでしたし、何より組んで間もないエンジンから滲んでいればオーナーはもちろんの事我々自身が気持ちよくありません。
その為、当時はオイルが浸透する事で膨張してシール効果を生むタイプのケミカルシートや、ガスケットシート表面に耐熱ゴムを塗布してある様なタイプのものを自作でカットしたりして試した事もあったのですが、メーカーが既にJ系に導入して実績のあったファイバーコアカーボングラファイトを採用し、現在に至る迄はこれが標準仕様となっています。
さて、当時いくつもの素材を合わせて検討していましたので、その中には更に別の素材もありました。
ちなみにこれはその際にガスケットメーカーに正規の図面起こしをしていただいたものですから実製作一歩手前です。
2010年3月となっていますから、あの震災の1年前、弊社がまだ世田谷の環八にあった頃の話です。
オイルストッパー用のビード位置検討用に暫定的にラインが入っていますので、メタルガスケットである事がわかるかと思います。(ちなみにこのままのビードラインではオイルストッパーとして使えません。)
このタイプでもメタルシートにコーティングする素材の選択次第でかなりの耐リーク特性を持たせる事は出来るのですが、当時このタイプで製作しなかったのにも理由がありました。
②に続きます。