一般的なオートバイ用点火システムでは、エンジン回転数に対しての点火時期が指定されている2次元制御がメインで、キャブレター時代の最後期にスロットル開度もしくはインテークマニホールドの圧力を軸に加えた3次元制御が行われました。
その後インジェクション仕様の時代となり各種センサーを備えて点火時期の制御にも様々な補正がかけられる様になりましたが、同様に1つ2つののセンサーを加えて点火制御のみをフルコンで行うと、燃料供給をキャブレターのままとしても様々な制御や設定が出来る様になります。
例えば、これはあくまで自分のやり方なのですが、エンジンスタート時の点火時期を通常のアイドリング時の点火時期より遅らせています。
ちなみに縦軸はスロットル開度なので、0.0や0.5とは、ほぼ全閉となっている事になります。
回り始めはほぼ上死点前に近い2°
クランキングが安定する500rpmあたりでも5°としています。
アイドル時の点火時期を11°に設定しているのに対して割と遅めです。
これは圧縮の高いエンジンでセルスタートする際にはクランキングスピードが思ったより上がらない場合、点火時期が早過ぎると圧縮上死点前に至る前に燃焼圧力が最大になって、上手くエンジンが回り出さずに始動性が悪化する事を防ぐ為です。
特にチューニングエンジン等で、始動クランキング中のエンジン回転に対して点火時期が早過ぎる場合、キャブからくしゃみをする様に燃焼ガスが吹き返して始動出来ない様な現象が起きます。
これは上死点前に最大圧力になった燃焼ガスで、ピストンが押し戻されてしまう様な力が加わった時です。
こうなると、スターターワンウェイクラッチの痛みや破損、クランクシャフトにもあまり良い事がありませんので、例えばスタータークランキング中の500rpm付近迄の点火時期はあえて上死点を超えた位置でスパークさせる様な設定をする事もあります。
エンジンを始動して暖機が終わった時点での点火時期は、下の写真の水色で囲まれている11.0のところです。
回転数が1000から1250rpmは一定としているのは、アイドリング中はエンジンへの負荷が非常に低く、ここで微妙な回転数の変化応じて進角させていると、クランクマスの小さいオートバイの場合はむしろ回転が不安定になる場合があった為です。