実走行にてフルコンのECUを調教中です。
一般的にインジェクションと言えば、どこまでもフールプルーフで、どんな季節でもスターターボタンを押せば確実に始動出来、走れば環境が変わっても全域で調子良く使えると言うイメージですが、それはそう言う風に仕事しろと様々な条件に対してECUに対して教育を施した結果であって、セッティングするのが人間なのはキャブと違いはありません。
むしろ、キャブレターはメーカーから届いた状態そのまま着けてもとりあえずはエンジンが始動出来て、調子が悪かろうが何とか動いてしまうのに対して、着けたのみの無設定では始動すら出来ないのがフルコンのインジェクションです。
ただ、構造的にセッティングの制約と出来ることが限界がインジェクションの方が遥かに高く、ECUが新しくなれば同じハードでも更に良くなって出来る事も増えて来る為、どこまでも自由に煮詰めて行くことが可能になります。
この為、キャブレターの原理や空燃比についてある程度ベースの知識のあるユーザーであれば触り方さえ覚えればその自由度や奥の深さが楽しくてしょうが無いかとも思います。
ちなみに下の写真はこちらの車両で使用しているフルコン、Link ECUのセッティング画面。
専用セッティングソフトが自由に設定出来るグラフィカルユーザーインターフェースに非常に優れており、使い込む事で理解し易いのが大きな特徴です。
それでもインジェクションはパワー感無いし、走っても感覚的に違和感あってつまらないからキャブの方が良いとおっしゃる人もいらっしゃいます。
例えば現行車を含み、メーカーがセットアップしているインジェクション車は元々排ガス規制に対応する目的で採用し、相当な距離を走行しても規制に対するマージンを取らなければならないセッティングされたものが多い為もあるでしょうし、もしくは何だかコンピューター付は難しそうだから手が出しにくそうだと端から諦めていらっしゃる場合もあるかも知れません。
後はコスト面でしょうか?例えば全てのハードセットアップとセッティングをプロに丸投げした場合、初期の導入コストが高いのは確かに事実ではあるのですが、キャブの様にセッティング用のジェットやニードル類は一切不要で、PCのみで無限に調整が可能な為、セッティングパーツに関してのコストは全くかかりません。
又、スロットルボディ自体の機械的な的な耐久性は、可動部分や摩擦により消耗する部分の多い高性能キャブとは比較にならない程高く、運転中にも無駄打ちせずにセーブ出来るガソリンと、エンジン自体の寿命も伸びるとなると、一概にキャブがコスト面で絶対優位とも言い切れません。
例えば昔の4輪の整備では長年使用して消耗したキャブは丸ごと新品に交換してしまった方が確実であり、さほど珍しくはありませんでした。
現在でも同じ愛車に乗り続けているライダーでFCRやTMRが、2機目3機目という話はざらに聞きます。
ちなみに先日製作させていただきましたZ1000Jベースのカスタマイズ車であるGodier Genoud(ゴディエ・ジュヌー)1135Rですが、オーナーさんよりのインフォーメーションによれば、それ以前のレーシングキャブレターに比較しても圧倒的に乗り易く速くなったのと同時にあきれる程燃費が良くなったとの報告をいただいています。
もちろん趣味性の高い車両ですので、燃費のみで語るべきものではありませんが、燃料がセーブ出来る事が悪い筈はありませんし、むしろ現代においては排ガスを抑えられると考えれば歓迎すべき事でしょう。
もちろんあえてアナログなものを楽しむ趣味性はありですし、自分自身もキャブレターの機械としての構造を調整すると言う作業は嫌いではなく、一方的に否定するものではありません。
両方を触っているから、それぞれの良い部分と悪い部分も理解出来ますのと、キャブの良い部分を見直すことも出来ます。