先日の事ですが、ご自身で整備されているクラッチがどうも操作が重くて切れも悪いという事で、ご相談を受けました。
レリーズ側の遊びが多くて切れが悪いのかなと思いつつ、調整の為にカバーを開けたところですが、正常な状態よりレリーズが奥まった位置に入っていて、遊び調整用のボルトは手前に飛び出ていました。
正常な状態は、もう5〜6mm程レリーズは手前側に、その分調整ボルトの突き出しは少なくなっているものです。
分かり易くするのにカバーを外したところです。
上の写真の調整位置だと、クラッチレバーを触らない状態でのレリーズ角度はこの状態になっています。
この角度だと、軸と力点の関係で、レバー操作によるワイヤーのストロークに対して、レリーズの回転量の割合が小さくなります。
(ワイヤーを1の量引いても、レリーズは1以下の量しか回らないのです)
この為、操作が重くなるのみでなく回転によるクラッチシャフトストロークが減るので、切れも悪くなります。
正しく調整するのであれば、クラッチレバーをフリーにしてワイヤーも遊ばせた状態でのレリーズアームの角度はこの位置です。
レリーズの調整を行う前に、ボルトを交換します。
純正の調整ボルトは、頭がマイナスネジなのですが、ロックナットをしっかりと締めようとすると回ってしまったり、マイナス部分が開いてしまって傷んだりしますので、ヘキサゴンレンチが使える様に6角穴の調整ボルトにしてしまう事が多いです。
ボルトの長さは同じ。ロックナットはマイナスドライバーの幅の逃げを考える必要が無いので、純正に使われている薄いもので無く標準厚さのものにしています。
この方が更に緩みもしなくなりますので。
Z1系のレリーズの調整は、軽く調整ボルトを締め込んでいってロッドに当たり、重くなったところから1/3〜1/2程緩めてナットでロックです。
ボルトを交換しているので、しっかり締める事が出来ます。
丁度良い位置にレリーズボルトを調整した後にワイヤーの遊びも適正に取った状態では、内部のレリーズはほぼこの角度になっています。
ここからクラッチレバーを操作すると、半クラッチ様態で一番力の調整が必要な時に、レリーズの軸中心とアーム先端の力点、そしてワイヤーの角度が直角になります。
操作系に関しては、バックステップのチェンジ廻りやブレーキ廻りのリンクを含み、操作で最も力が必要であったりフィードバックが必要なところで直角になるのがセオリーです。
直角を形成してやると、1の操作に対してほぼ1の量だけ軸を回すことが出来る為です。
原理については意外にもちゃんとサービスマニュアルには書いてない場合が多いのですが、ご自身で整備や調整を行われる場合は、この基本を憶えておくと良いでしょう。