エンジンをスムーズに始動させるには、良好な状態のバッテリーとスターターモーター、それと適切にスパークを行える点火システムが必要です。
例えば、バッテリーに蓄積された電力が充電不良等で低下していたりすると、スターターモーターの作動時に大電力を供給している間極端に電圧が低下します。
イグニッションコイルのスパーク電圧は、このバッテリー電圧に応じて上下しますので、それに合わせてスパーク電圧も低くなり易く、その場合始動性は悪化します。
これは、良好な状態のバッテリーを使用してスターター使用時の電圧を見たものです。
始動前には13.2Vの電圧が、スターターボタンを押した瞬間に11V台迄降下しているのがわかります。
このくらいの電圧低下であれば特に問題無く始動は出来ますが、スターター使用中に8Vを切ってしまうと、イグニッションコイルによっては十分なスパークが行えなかったり場合によっては点火システム自体にリセットがかかってなかなか始動できなくなる場合もあります。
ちなみに電圧が大幅に下がる要因としては、バッテリー性能の低下はもちろんですが、セルモーターの消耗によりモーター自体が動作する以上の電力を消費する事で、相対的にバッテリー電圧が低下してしまう場合も見受けられます。
さて、以下は弊社でセッティングを行ったインジェクション車のECUにて取得した始動時電圧の遷移ログです。
キーをオンにして始動前の電圧が13.89V
スターターボタンを押して、モーターが回り始める直前が最も電力を使いますので、ここで一気に電圧が低下します。
9.33Vに落ちました。
セルモーターによりクランクが回り始め、センサーがピックアップローターの歯を読み取り、クランク角度の検知を始めます。
回転数は500rpm程度です。
まだコイルからはスパークは開始されていません。
この状態で11.17vです。
クランクシャフトが回転を初めてから約1回転半の時点でECUからイグナイターに点火信号が送られ、イグニッションコイルによってスパークが発生した瞬間です。
ピストンが押し下げられて、一気に回転数が上がります。
この時の電圧が11.19Vです。
クランクが燃焼により回転を始め、スターターモーターの速度を追い越した状態です。
スターターボタンはまだ押されている為、まだモータ―には電力は供給されている状態ですが、負荷が無くなった為に消費電力が下がり、電圧が上がります。
この時12.39V
エンジンがアイドリングを開始した為、スターターボタンをリリースすると、モーターへの給電は停止しますので、更に電圧は上がります。
13.27Vとなりました。
これ以降は、エンジン側の発電機とレギュレーターによってバッテリーには充電が開始されます。
上の電圧の流れが、正常な車両のものです。
クランキング中の電圧が極端に低い場合は、バッテリーや車両の充電系、スターターモーター^の点検が必要です。