空冷エンジンは、熱分布に大きな偏りがあると言われているのは、一般ユーザーでも認識している方は多いかとは思いますが、それがどの程度の物かを数値で見た事のある人は少ないかも知れません。
さて、どれ程の差があるか、対物温度計で簡単に測定してみます。
車両は、73mmのハイコンプピストンにステージ2クラスのハイカム、圧縮比は更に面研を加えた上でツインプラグとした、ストリートエンジンとしてはかなりのレベルのチューニングエンジンです。
走行条件としては、冬場の日中に天気の良い日に高速道路をツーリングレベルのスピードと回転数で流していると想定し、それに応じた風量が前方から当たっています。
インテーク側ヘッドカバーの後方。88.6℃
エキゾースト側ヘッドカバーの上面。78℃
意外にもエキゾースト側のカバーの方が温度が低いのは、前方からの冬場の空気が余計に当たり、冷却される為かと思います。
例えば、これで信号待ち等で停車するとエキゾースト側の温度が一気に上がります。
燃焼室裏側、2番プラグの座面近くです。133.4℃
燃焼室裏側、1番プラグの座面近くです。123.5℃
やはり4気筒空冷エンジンの場合、内側に位置する2番3番より、外側の1番4番の燃焼室温度が高くなります。
メーカーのキャブレターセッティングでも、2番4番の燃焼温度を抑える目的で僅かにガソリンを濃い目にセッティングしてしているものも多いです。
シリンダーヘッドフィンの下方、ヘッドガスケットの上側あたりです。110.8℃
シリンダーブロックの上側、ヘッドガスケットの下側です。101.0℃
温度差約10℃。この車両では熱伝導性の高いメタルヘッドガスケットを使用していますので、割とヘッド面とブロック面との温度差は割と小さい方です。
これが、旧来のグラファイトタイプヘッドガスケットの場合、もう少し温度差は大きくなります。
シリンダーブロックの下方。77.6℃
ブロック上部に比較して、24℃程低いです。
熱伝導性の良いアルミのブロックでも差が大きいのですが、燃焼室に近い方がより熱く、走行中はその熱が下方に伝わる前に多くが風で冷却される為です。
又、チューニングエンジンであっても走行中のシリンダーブロックはヘッドに比較しても温度は低目です。
空冷エンジンの燃焼室で発生する熱の多くは、シリンダーヘッドに風が当たる事で放出される為です。
クランクケース上部。74.8℃
この辺りは、シリンダーブロック下部ともさほどの差はありません。
さて、このエンジンにはオイルクーラーを装着していますが、冬場という事もあり、クーラーコアは風が抜けない様にカバーして塞いでいます。
それでも走行中風には晒されますので52.8℃と、一般的な感覚にすれば非常に低くなっているのがわかります。
この状態で巡航を継続して、オイルの温度は約70℃となっていました。
もしもクーラーコアを開放している場合はオーバークールになるかも知れません。
レーシングスピードを高負荷で走れば又オイル温度は変わって来ると思いますが、ストリートを走行する場合、冬場はオイルクーラーによる過冷却にも注意が必要と思います。